現在、大ヒット公開中の『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』。

 高校生ら若い観客からも高い支持を受けるこの映画は、2年前に公開されてホラー映画史上最大の興行収入を記録した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の27年後を描く完結編。舞台は田舎町。27年に一度、そこにひそむ邪悪なものが「ペニーワイズ」という名のピエロの姿で町に惨劇を引き起こし、それを知った子供達が「IT」を一度は倒すも、27年後に再び……という物語で、世界的なベストセラー作家、スティーヴン・キングの代表作『IT』を原作としている。

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017) ©AFLO

スティーヴン・キングの魅力とは?

 キング原作映画はこれだけではない。11月末にはスタンリー・キューブリック監督で映画化された『シャイニング』の続編『ドクター・スリープ』が公開され、年明けにはキング自身が恐ろしさのあまり発表を見合わせた『ペット・セメタリー』の映画化作品も日本公開される予定になっている。まさに〈スティーヴン・キング映画まつり〉の様相を呈しているのだ。

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 デビューから45年、世界中の読者を魅了し続けてきた巨匠の魅力はいったい何なのか。

©文藝春秋

「文藝春秋」編集部は、古参のキングファンである作家・冲方丁さん、綿矢りささん、そして文芸評論家の池上冬樹さんをお招きして、それぞれのキング愛を語っていただいた。実は『IT』、1990年にアメリカでTV化されている。話は90年版との比較からはじまった。

イマジネーションの中に潜んでいた“残酷さ”

綿矢 映像の完成度や見せ場の迫力がすごく洗練されたなというのが第一印象でした。

冲方 CGの力で、ピエロが子供の腕を食いちぎるわ、捕らえた人間を空中にプカプカ浮かばせるわ……。キングのイマジネーションの中に潜んでいる残酷さが、映像としてはっきりと現れていましたね。

冲方丁氏 ©文藝春秋

綿矢 ビジュアルで言うと、特にペニーワイズが格好よくなりましたね。今回は本当に“異形の者”という感じがする。服装も、前は赤、青、黄色という派手な色合いだったのに、新作は銀色がかっていて上品な印象です。

 そして話はキングの小説へ。小学校からキング作品を読み始めた綿矢さん。一方、冲方さんは高校生のころある試みを……。