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「この人、これでも減らしたんや……」

池上 冲方さんの過去のインタビューを読んでびっくりしたんですけど、若い頃、キングの翻訳本を全部書き写していたんですって?

池上冬樹氏 ©文藝春秋

冲方 そうなんですよ、もう高校や大学の時代ですけど。『IT』はまず図書館で文庫の1巻を借りるじゃないですか。そんなに長いことを知らなくて、一体いつ終わるんだろうと思いながら写していたら、4巻まであると聞いて。僕の高校時代はこれで終わってしまうと思って、やめました(笑)。勉強にはなりましたけど、キングの場面描写への執着、偏執狂的な情念に精神をやられました。

綿矢 作家になってから、キングの『小説作法』を読んだんです。すごく親切に小説の書き方について教えてくれるから、参考にしようと思って。そのなかで不思議だったんですけど、『何度も推敲して文章を削ぎ落としていけ』という助言があって。そっか、この人、これでも減らしたんや……って(笑)。

足下には別世界が広がっている

池上 話を聞くと笑っちゃうんだけど、文章を読んでいるとなぜかゾクゾクして怖くなってしまう。そこが面白いですね。

綿矢 小説全体は長いんですけど、恐怖のシーンって意外と一瞬で終わるんです。キングのその瞬発力、スピード感がすごくて。

綿矢りさ氏 ©文藝春秋

冲方 ペニーワイズは地下の下水道を棲家にしている。足下には別世界が広がっているというのが、キングのリアリティーなんでしょうね。

綿矢 私、排水溝がどこかに繋がっているとか考えたこともなかったんですけど、下水は血や髪とかを連想させるし、そういう異世界に繋がる黒い穴なんやなって。キングは日常に潜む“魔”みたいなものを書いてくれていると気づきました。

冲方 キングって今、72歳ですか? そんな感性をその歳まで持ち続けるのって、かなり生きづらそうです。部屋の電気とか怖くて絶対消せないじゃないですか(笑)。

出典:「文藝春秋」12月号

 キングの魅力を熱をこめて語る3氏。奇妙な着想から小説を仕上げてしまう不思議や、3氏が偏愛するキングの変な短篇小説の数々、そして作家としてキングに感じる凄み、映画『シャイニング』『ミスト』についての侃々諤々、そして綿矢さんの“コスプレ秘話”まで、ここに収めきれなかった「スティーヴン・キング偏愛作家座談会」の全文は、「文藝春秋」12月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。

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