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【“愛子天皇”は是か否か】「女権拡張を見るにつけ、日本の精神風土が変わるのもしゃあない」徳岡孝夫氏インタビュー

令和皇室、最大の“宿題”をどう考えるか

2019/12/08

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会, 歴史

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キング&クイーンの国と同列に論じられない

 日本国が何年続くかわかりませんが、地震や台風の備えをする国が、なぜ皇室に男の子が生まれない場合の備えをしなかったのか。新憲法に合わせて皇室典範を変えたとき、養子の可能性まで入れておけばよかった。子どもというのは、どんどん生まれるものだと思っているのが間違いだった。しかしもう、そんなことを言う自由は、この国からなくなってしまいました。そこで代わりの方法が、遅ればせながら「女もしたらええやないか」というわけです。

愛子さま 宮内庁提供

 引き合いに出されるのは、現にイギリスやオランダは女王もいるやないか、という話です。しかしあちらは、キング&クイーンの国。日本の天皇はエンペラーです。

 キングというのは、仲間うちの統率者です。エンペラーは、神や天の命によって位を得た人です。かつては中国、ロシア、エチオピアなどに存在しましたが、いまは世界中に日本の天皇しかいません。同列に論じることは間違いです。

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 僕は昭和5年生まれです。大阪で学徒動員されて、鉄道省の工場で働きました。機銃掃射から走って逃げたり、焼夷弾が落ちる汽車のプラットホームに腹ばいになって、目と口と耳をふさいで平たくなっていました。

 あの頃の日本人は、誰もが天皇陛下のために死ぬんやと思っていた。しかし昭和天皇が亡くなったとき、乃木希典のように殉死する人はいなかった。みんな「海行かば水漬く屍」と歌ってたやんか。天皇のために命を捧げようと、万葉集の時代から日本人は言ってたやんか。だから僕は、命を賭けて男系男子の存続を守ろうと戦うヤツもいないやろうな、と思っています。

©JMPA

世の中は移り変わっていく

 僕の結論は、女性・女系天皇について絶対駄目だとは思っていないというか、できれば男系を守ってもらいたいけれども、この現実に直面して、やむを得ない場合には仕方ないという消極的なものです。

 この気分は、朝鮮戦争のときに味わった感情に似ています。開戦当初、東京でパンパンと遊ぶのに慣れとったアメリカ軍は金日成の朝鮮軍にどんどん負けて、釜山まで追い詰められました。それを見た日本人には、「いい気味や」という気持ちがあった。

徳岡氏 ©文藝春秋

「マッカーサーが負けてくれたら、空襲の仕返しができる。しかしマッカーサーが負けてソ連が日本へ攻めて来たら、我々はシベリアへ連れて行かれるかもわからん。やっぱり、勝ってくれんと具合悪いな」

 と思った。あのときと同じような、矛盾をはらむ希望です。

 言い訳として引っ張り出したいのは、昭和天皇の辞世といわれる歌です。

〈あかげらの叩く音するあさまだき 音たえてさびしうつりしならむ〉

 世の中が移り変わっていくのはやむを得ないんじゃないか、と昭和天皇も言ってます。

 急いでやるべきは、早く制度を変えることです。そうこうするうち、男子の双子や三つ子がお生まれになって、物事が一気に解決するかもわからんと思ったりもしています。

【“愛子天皇”は是か否か】「女権拡張を見るにつけ、日本の精神風土が変わるのもしゃあない」徳岡孝夫氏インタビュー

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