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「理屈じゃない、男でないとダメ」

 平成18(2006)年1月26日号の『週刊文春』に、「女性・女系天皇『識者14人』私はこう考える」という特集が載りました。小泉純一郎内閣で議論が始まったときです。僕はその記事で、「理屈じゃない、男でないとダメ」と述べました。以下は引用です。

天皇皇后両陛下と愛子さま ©JMPA

〈私は「天皇」という存在に、古代から続き、これからも永遠に続いていく日本の「家長」を感じています。これは心のありようなので、理屈で判断できない。〉

〈皇室に一夫一婦制が導入されたのは、大正天皇の時代から。天皇が「象徴」だという発明も、60年前になされたものです。ヘーゲルの弁証法も、民主主義の思想も、「天皇」の起源に比べればずっと新しい、チャチなものです。
 最近発明された制度や概念を持ってきて合うとか合わないとか言うのは、流行のルイ・ヴィトンの鞄が似合うかどうかと同じで、まったく意味のないことです。〉

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「徳岡、お前は転向したんか!」と言われると辛い。前回は確かにそう思っていたけれども、時間がたって心境の変化があったのです。だって、生まれへんものはしゃあない。皇室の将来を心配するのは、日本国民として当然のことやからです。

秋篠宮ご夫妻と悠仁さま 宮内庁提供

 昭和から平成の御代替わりのとき、皇位継承資格をもつ男性皇族は、天皇(現上皇)のほかに7人いらっしゃいました。現在は、84歳の常陸宮を含めて3人です。戦後70年で、男子の皇族は3人しか生まれていませんが、内親王と女王は10人生まれています。降嫁された女性皇族(戦前生まれ含む)が7人。せっかくたくさん生まれている女性の皇族を民間人にしてしまうのは、もったいないことです。

 それに今の日本の趨勢は、「男にできることは、女にも全部できる」という主義です。いつ誰が決めたのか、知りませんけどね。それだけではなしに、「男にできることは女にも全部できると認めないことは、けしからん」という大合唱が、世の中にとどろいている。ほんなら、女に大相撲がとれるかと反問したいですが。

 この女権拡張を見るにつけ、「日本の精神風土が変わるのもしゃあないな」と思わざるを得ません。女性でも天皇の職責を十分に果たし得るどころか、果たし得ないであろうと言おうものなら、大変なことになると恐れます。「憲法を見てみい」と言われたら、何も言い返せなくなってしまう。ここは言論の自由のない国や。