『所さん!大変ですよ』をつけてたら、最近のニュースやワイドショーで聞き慣れた塚本幼稚園の子どもたちの歌声が聞こえてきた。……と思ったら勘違いで、和歌山県民歌を小学生が歌っている場面だった。子供の元気な斉唱は今やすべてあの幼稚園の安倍総理讃歌(歌ではないけど)に聞こえてきて困ったもんだ。
番組を見てたら、和歌山県知事肝いり(?)で、県威発揚のため(?)、山田耕筰作曲で「名曲」である県民歌を小学生に歌わせているが、聞き覚えのない歌なんで生徒も先生もやや困り顔、という話だった。そりゃまあ、今どきの子供は名曲唱歌みたいなもんは喜ばんわな、と思いながら見ていると和歌山以外のいろんな県民歌の有様がいっぱい紹介されてこれがなかなか興味ぶかい。老若広く県民歌が歌われてる県もあれば(茨城出身の知り合いはよく茨城県歌を歌ってた)、ウケを狙ってゆるキャラJ-POPみたいな新曲つくる県やら、四十二の県に県民歌があるとな。
最初に出た和歌山で、この山田耕筰の名曲唱歌調県民歌の歌詞に異議あり! という声が挙がっている、それも県議が言ってるらしい。何やら政治的にキナ臭いことでもあるのかと思いきや、「歌詞に“常春の国”とあるのはおかしい、雪降ってたいへんなとこもあるんだ!」という「そこかよ……」と肩を落とすような異議だった。しかし議員さんはすごく胸を張って堂々とそれを主張していて、長野県では長野と松本の対立の話なども出て、こんな小さな島国でも内戦による分断、流血は充分ありえる。
とにかく、みんなで声を合わせて歌うというのは「県とか民族とか学校とか、集団の威力」をいや増すということがすごくよくわかる。わかるんだけど、この番組見てるとそれが傍からみてすごくバカバカしい、というのもわかってしまう。伊万里市の歌が、郷土出身著名詩人に歌詞を頼んだら大長編歌詞が来てしまい、仕方なく(?)四十分もの歌となって埋もれている話などは、威力発揚歌というものの成り立ちのこっけいさをあらわして余りある。
塚本幼稚園問題の折からこの企画が……ってわけじゃないだろうけど、所ジョージの「県民歌とか基本どーでもいい!」という姿勢が、塚本幼稚園の批評にもなってて(そんなつもりはないだろうが)、NHKがふだんやってる「とんがったつもりの若者番組」よりも切れ味よかったと思う。
▼『所さん!大変ですよ』
NHK総合 木 20:15~20:43