──前回は予約が取れない店がどんな店なのかについての話でしたが、今回はコネもツテもない一般の人が予約の取れない店に入るためにはどうすればいいかを、美食アプリ「テリヤキ」をプロデュースする堀江貴文さん、メディアプロデューサーの大木淳夫さん、モデルで食べログ「グルメ著名人」の斉藤アリスさんに語ってもらいました。

堀江 前回の冒頭で、予約が取れない店にも、物理的に取れない店と努力すれば取れる店の2種類があると話しましたが、前者は難しいとしても後者はまず店のルールを知って、正規の手続きを踏んでしかるべきときに頑張れば取れます。

右から、大木淳夫さん、斉藤アリスさん、堀江貴文さん

大木 そうですね。たとえば湯島にある一軒家の老舗鶏鍋料理 「鳥栄」は奇数月の1日、朝 8時から電話で予約できます。冷房が無いので、狙い目は夏でしょう。炭火の鍋なので、相当暑いですが。雑色の「ラ・マルゲリータ 」というイタリアンは半年に1回、1日だけ電話で予約する日があるんです。ひとりにつき2日分まで取れます。知り合いが6時間電話して予約を取ってくれて行けたことがあります。

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斉藤 じゃあ私でも取れますか?

大木 取れます。頑張って電話をかけ続けて繋がれば(笑)。

湯島にある一軒家「鳥栄」の鳥鍋。

斉藤 でも前者の「物理的に予約が取れない店」は無理なんですよね。

堀江 いえ、それだって方法はいくつかあります。1つはFacebookで予約の取れない店の店主と友達になったり、フォローしておくと、ドタキャンが出た時にその情報がタイムラインに流れるところがあります。吉祥寺の赤身肉専門店「肉山」とか、二子玉川の寿司「すし 喜邑」、阿佐ヶ谷の「SATOブリアン」、東麻布の寿司「東麻布 天本」なんかもそうですね。それを見逃さないで、出た瞬間に申し込めば行ける可能性があります。仲間内で、Facebookページでドタキャンの情報案内を作っているグルメグループとかもありますからね。

斉藤 そのグループに入れば、キャンセル情報を教えてくれるんですね。

堀江 教えてくれるというか、店側は切実だからね。「予約客が何の連絡もなくキャンセルしたまま1時間経って困ってるから、誰か助けてください」という感じの投稿が来たりする。

大木 Facebookのタイムラインに「公開」で書いている店主もいますね。「もう仕入れちゃっているんで、激安にしますからぜひ」なんて。

斉藤 それは探さないと。

大木 さっき話に出た吉祥寺「肉山」のオーナー、光山さんは LINEでもお客さんをグルーピングして、キャンセルが出たとたんにその情報をぱっと流していました。 ですが、一瞬で埋まるんです。最近は店側もそういう努力をしているんですよね。

堀江 店側としてはキャンセル率をうまく下げることが一番の重要な課題。そのためにドタキャンをしそうにない客を捕まえることと、ドタキャンをされた場合にすぐにリカバーできるシステムを整えることが大事。逆に言うと、ドタキャンは僕たち一見客にとってはすごく狙い目なわけ。

大木 一度その輪に入っちゃえばいいわけです。

阿佐ヶ谷「SATOブリアン」のブリかつサンド。

斉藤 でも、その輪に入るためにはどうすればいいんですか?

堀江 それが2つ目の方法なんですが、僕はその輪に入りやすくするために「テリヤキ美食倶楽部」を作ったんですよ。美食家が集う有料の会員制コミュニティサロンで、入会して月額4,980円を払うと運営側から月に1、2回、「○月○日、○○で会食をやります。○名募集ですがいかがですか?」という、僕も行ってみたいと思う予約の取れない店での会食のお知らせが送られてきます。

 参加は先着順で、参加できたらその席で他の参加者とFacebookなどで繋がります。だいたいみんなグルメで小金持ちだから、予約の取れない店の予約を取りまくっているので、仲良くなればその人主催の会食に誘われるようになります。さっきも言ったけど、たまに僕も予約をもらっています。

 仲良くなった人の友だちの友だちの友だちくらいには、プラチナチケットで有名な鴨料理店「鷹匠壽」の予約が取れるような人がいて、2ステップくらいで繋がるので、半年から1年ほどテリヤキ美食倶楽部や、そこで知り合った人主催の会食に積極的に参加して信頼を得られれば、「壽の枠が一つ空いたのでどうですか?」と声をかけてもらえるようになるわけです。実際、テリヤキ美食倶楽部ですごくアクティブに活動をしていて、僕に予約をいっぱいくれる人がいるんですが、7~8ヶ月くらい参加しただけで壽に行けたと喜んでました。こういう感じの、お金さえ払えば入れる美食サークルみたいなものが他にもいくつかあるので、本当に予約の取れない店に行きたい人は利用するといいですよ。

大木 会費を払ってまで予約の取れない店に行こうとする人って、店にとってもいい人なんですよね。

堀江 そうなんですよ。テリヤキを作る時に有料にするべきかどうかメンバーとずっと議論してたんですが、3年やってみてやっぱりお金を取っててよかったなと思いますね。店の人は「テリヤキを見て来たというお客様はみんないい人です」と言ってくれてますから。

大木 あとは誘われる人になれるかどうかも大事ですよね。

堀江 そうそう。金払いもマナーもよくてドタキャンもしないと信頼されて誘ってもらいやすくなります。

斉藤 マナーがいいってどういうことですか?

堀江 食べログに悪口を書かないとか、会計時に「なんでこんなに高いんだ」と文句を言わないとか。

大木 料理写真を撮るのはいいんですが、10枚も20枚も撮るんじゃなくて1枚撮ってすぐ食べるとか。まあ、普通の人間としての礼儀ですよね。

斉藤 それはそうですよね。料理が出てきたのに、ずっと話し込んでるとかはありえないですよね。

大木 そういう人とは、二度と来たくないと思う。基本的に料理は出た瞬間が一番おいしくなるように、店側が考えて作っているわけですから。

堀江 あと、あまりにも好き嫌いが激しい人とかもないですよね。

大木 鮨屋に来ているのに、生魚が食べられないんです、とか言う人、時々いますからね。

堀江 遅刻もダメですよね。居酒屋とかはいいんだけど、一斉スタートするコースだけの店とか、お任せだけの店は遅れて来る人がいたら店側が大変ですからね。いつも遅れてくる人はあんまり誘いたくないですよね。

斉藤 遅刻ダメなんですね……、そういう情報はもっと早く知りたかったです(笑)。

堀江 僕はどんなにかわいい子でも絶対ビシっと言うよ。「お前さ、30分遅れるとかお店のこと考えたことあんの?」って。でも言えないやつが多いのよ。女性から嫌われたくないなと思って。

斉藤 むしろ言われたいです。

堀江 意外とマナーは重要ですよ。

大木 いい店の出店情報を早めに得て、オープンした直後から無理してでも通って早めに常連になることも有効ですよね。そうすると普通の人より早いサイクルで予約が取れたり、キャンセルが出たら案内してもらえたりしますし。

堀江 若手の育成も大事ですね。つまり、店の2番手とがっつり掴んで仲良くなっておくんです。例えばさいとうの2番手の板さんが独立して店を開くと、絶対にすぐ予約の取れない店になる。だから、その前に押さえておくということです。

大木 先物買いですね。

堀江 そう、先物買いしてる人多いですよ。僕はベンチャー投資家なので基本的に有名になる前に行くんですよね。予約が取りやすいし、ふらっと行けるから。

大木 今、先物買いという意味では、広尾に出来たばかりの中華料理店「茶禅華」がおすすめですね。「麻布長江」という有名な西麻布の中華料理店と「龍吟」という世界トップクラスの日本料理店で勤めた経歴をもつ料理人が2月10日にオープンしたばかりの店なのですが、繊細な料理と、お酒とお茶を絡めたペアリングでかなり評判がいいです。

 それとエル・ブジで修業したあと、イタリアの大金持ちのマダムの専属になり、そのあとペルーの世界的に有名な「ガストン」に行った太田哲雄さんが三軒茶屋で始めたイタリアン「NATIVO」が話題沸騰中です。ただ、こちらはまだ、プレオープン中ですので、ぜひ知り合いを見つけて訪れて、「輪」に入ってください。

広尾に出来たばかりの中華料理「茶禅華」

斉藤 なるほど、そんな奥の手があるんですね。そもそもみなさんは月に何回くらい予約の取れない店に行ってるんですか?

大木 ひと月に何軒も、なんて行かないですよ。実は「予約が取れない」という点には興味がないんです。

堀江 そうそう。決して予約の取れない店に行きたいわけじゃないんですよね。単純においしい料理を出す店に行きたいだけであって、予約が取れる・取れないは関係ない。たまたまおいしい店が予約が取れなくなってるだけであって。

斉藤 じゃあ、どうやってそういうお店を見つけるんですか?

堀江 例えばさっき言ったテリヤキって、予約が取れなくなる前にキュレーターが紹介してるからすごく優秀なアプリですよ。月480円だけど、外食に月5万使ってるようなグルメはその価値は全然あると思う。

大木 「東京最高のレストラン」もぜひ活用していただきたい! 特に巻頭の座談会を読んでいただければ、今の東京のグルメシーンをよく理解できると思います。

斉藤 今日はもっと早く知りたかったと思ったことがたくさんありました。ありがとうございました。

堀江 今度予約が取れない店に誘うね。僕が取るわけじゃないけど(笑)。

大木淳夫 1965年東京生まれ。ぴあ(株)メディア・クリエイティブ局チーフプロデューサー。『東京最高のレストラン』編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に『いまどき真っ当な料理店』(田中康夫)、『一食入魂』(小山薫堂)、『日本一江戸前鮨がわかる本』(早川光)、『宮部みゆきの江戸レシピ』など。

 

堀江貴文 1972年福岡県八女市生まれ。SNS株式会社ファウンダー。美味いものを食べる事を至上の喜びとしており、グルメの賢人からの情報で世界中の旨いものを探し食べ歩く。

 

斉藤アリス 1988年ロンドン生まれ。モデル、ライター。趣味は世界のカフェめぐり。現在、食べログ「グルメ著名人」として活躍。3月28日に世界中のカフェ107軒を収録した『斉藤アリスのときめきカフェめぐり』(エイ出版社)を出版。

構成=山下久猛(フリーライター)