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人類は宇宙へ行くべきか? 行くべきではないのか?

 人類は宇宙に行くべきか、それとも行くべきではないのか。20年前のEVA体験以来、土井はずっと自らにそう問い続けてきたと語る。

 それはEVAという体験によって、彼が人生に抱え込んだ大きな謎だった。そして、彼は「有人宇宙学」という新しい学問の創出に取り組むことでいま、その問いに対しての自分なりの答えを出そうとしているのである。

 本書で話を聞いた多くの宇宙飛行士たちの活動の舞台となった国際宇宙ステーション(ISS)は、1984年にアメリカのレーガン大統領が建設を発表することで正式に始まった計画だった。それから30年以上の歳月が流れ、世界の有人宇宙開発はドナルド・トランプによる月探査の大統領令、イーロン・マスクのスペースX社に代表される民間の宇宙開発の活発化など、新たな段階に入ろうとしている。

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 インタビューの時間が終わりに近づいた頃、土井はそうした宇宙開発をめぐる環境を踏まえた上で、日本の宇宙開発も今後、国家としてのビジョンを明確に持つべきだと話した。その言葉の端々には、日本における第一期の有人宇宙活動の一翼を担った彼の強い思いが感じられた。

 日本人による有人宇宙開発が始まってから約四半世紀、今後、彼らが築いてきた土台にどのような宇宙体験が加わっていくのか。土井の言葉を聞いていると、そのことが楽しみになってくる。

 そして、そのとき日本人宇宙飛行士たちはどのような言葉を、私たちに伝えてくれるのだろうか。土井へのインタビューを終えたとき、私はいつか再び彼らに話を聞いてみたいという気持ちを強くしていた。

 人はなぜ宇宙へ行くのか――。

 日本人宇宙飛行士は何を見たのか、史上初・歴代12人の飛行士への総力取材を行った『宇宙から帰ってきた日本人』発売中。