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83歳“孤高の思想家”西尾幹二の遺言「時代の嵐に閉じ込められても、しなければならないこと」――2019 BEST5

“最後の思想家”西尾幹二83歳インタビュー #3

2019/12/28
note

67歳で開設した「インターネット日録」

――最近ではネット右翼と呼ばれる、「安倍首相を支持しなければ反日だ」「中国人や韓国人は出て行け」などのメッセージをインターネット上で発する層が現れています。どのように感じていますか。

西尾 あまり読まないけれど、いい傾向ではないですね。一番いけないのは匿名であることですよ。ハンドルネームですか、あれは無責任にならざるを得ない。自分で正体を隠して、なんでもごまかしながら憂さを晴らす。そんな目的であるならば、発言自体しない方がいい。

聞き手・辻田真佐憲さん(右)

――西尾さんは2002年に「インターネット日録」というウェブサイトを開設されて、かなり早い段階からネット上での発信をしてこられました。特に当時は67歳で、ご年齢的にも珍しい試みだったと思うのですが……。

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西尾 あれは協力してくれる女性がいたのです。自分が全部やるからと熱心に誘ってくれ、私がその人に丸投げしてはじめました。今も彼女に任せています。

――日録へのコメントに傷つくことはありましたか?

西尾 それはいっぱいありましたね。傷つくというか、不愉快になった。「つくる会」の紛争の頃は特に書き込みにひどいものがあった。私はあの頃、インターネット上での発言の手心がよくつかめていなかったから、正直な本音を書くこともあったし、ちょっとした一言が増幅拡大して、あちこちにばら撒かれていく危険性をよく知らなかった。雑誌などに文章を書くこととは違うということが、このとき初めてよくわかった。新しい経験でした。

 

責任を持って書きすぎるとネットではいい結果にならない

――その違いとは。

西尾 つまり責任を持って書きすぎるとネットではいい結果にならない。自分の名前で自分の考えている論を責任を持って書く、その姿勢が頑なにすぎると場合によっては誤解を重ね、紛争を激化させてしまうのではないですか。

――今もネットはお使いになるんですか。

西尾 最近は見ていないからわからないですが、昔はよく「株式日記と経済展望」というブログを面白く読んでいました。

――株式ですか?

西尾 いや、株のサイトではないんです。時事評論の典型的なサイトですが、非常にレベルが高い。文化論への言及もある。私は影響も受けました。