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「本当にやりたいこと」を探して……元日本代表・久保竜彦が瀬戸内海で「塩づくり」を始めた理由――2019 BEST5

“ドラゴン”久保竜彦インタビュー#1

2019/12/28
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“自由人”が最もしっくりとくる場所を探して

ーーそんな中で、この島に辿り着いた。

久保 周南市にある徳山大学でやっているサッカースクールに呼んでもらってて、地域貢献活動をしている会社の社長さんと知り合った。その会社が野菜をつくったり、塩つくったりしていて、そこにいた新井章吾さんという海藻の研究者(海藻研究所所長)に酒飲みながら話を聞いたら面白くて、こっちに来ようと思ったんです。

 広島から引っ越してきたのは、去年の6月。ちょうど1年ですね。いまは、大潮のときの塩づくりと山の中での野菜づくりを手伝ってます。塩づくりでは、火の番が多いね。前は泊まり込みでもやってたけど、いまは、対岸の室積から船で通っている。

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 サンフレッチェ広島、横浜F・マリノスなどで活躍した久保さんは、日本代表にも招集され、32試合で11得点をあげている。高い身体能力を生かした個性的なプレーで強い印象を残すとともに、日本代表への参加を拒否したり、記者会見でのぶっきらぼうな応対をするなど、ピッチ外でも何かと話題を呼んだ。

 そんな“自由人”久保さんは、引退後、自分が最もしっくりとくる場所を探し続けていたのだろう。良き隣人がいて、人に縛られることなく、時間からも解放された心地良い場所である。

 

「自分が旨いと思ったのは、7月、8月の塩」

ーー塩づくりを1年やってみて発見はありましたか。

久保 いつも大潮のときに海から汲んでくるんだけど、普段の海のときより旨いんすよね、不思議と。大潮は、月に8日ぐらいあるんですけど、味が違うんです。で、同じ1年でも塩の味は微妙に変わる。自分が旨いと思ったのは、7月、8月の塩ですね。

塩釜で作業する久保さん