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「本当にやりたいこと」を探して……元日本代表・久保竜彦が瀬戸内海で「塩づくり」を始めた理由――2019 BEST5

“ドラゴン”久保竜彦インタビュー#1

2019/12/28
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朝は5時起き、畑に出て、塩を見て……

 ーーいま、室積での久保さんの1日は、どんな感じなのでしょう?

久保 朝は5時に起きて、湾を見ながら、なんかおらんかなあって歩いて、釣りをしている人がおったら話して。自分も7時半ぐらいまで釣りをやったり。で、そのあと、1時間半ぐらい山に走りに行って、気持ちよくなったら、戻ってきてメシ食って。走ると気持ちよくなるし、頭がすっきりするし。

 で、昨日とかは、10時の船で牛島に渡って、塩釜にくべる薪割り。そのあと、畑に出て、また塩を見て、という感じですね。だいたい気分やけえ。天気みて決めている感じですね。

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 ここでは、アジ、メバル、イカ、カサゴ、カレイ、キスとかいろんな魚が釣れるんですけど、俺はまださばけない。本当は、せっかく自分で釣った魚だし、調理したいけど、魚がぐちゃぐちゃになったらいやだから、まだちゃんとやってない。包丁は自分で研いでいるんですけどね。

 漁師というのも考えるんですけど、実際には、漁、難しいですからね。ま、真似事になるんですかね。地元の市場でセリとかも見たけど、せっかく釣ったタイとかが100円で投げ売りされているのも見たし。値段がつかないこともあるし。セリを見てからは、現実は厳しいと思いましたね。趣味でやるならいいけど。

 

 夜、本土に戻ってから、久保さんの友人がシェフを務めるイタリアンレストランで食事することになった。店に着くと、久保さんは、自ら、サーバーからビールをつぎながら飲み、私たちにも提供してくれる。そして数時間、何も言葉を残さずふらっと店を出て行ったドラゴンは、そのまま戻ってくることはなかった。

 いまや港町で自由きままに引退後の人生を送るドラゴン久保。これまで歩んできた波瀾万丈のサッカー人生を、潮風吹く島で、じっくり聞いた。

#2に続く)
写真=榎本麻美

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