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池袋は「埼玉県の植民地」から脱却できるか? 文化都市へと変貌を遂げる街の“最大の弱点”

再開発事業で渋谷・新宿に並ぶ街へと羽ばたけるか

2019/12/17
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「消滅可能性のある自治体」に選ばれた豊島区

 埼玉県民御用達の街・池袋に転機が訪れたのは、86年のJR埼京線開通だった。それまで埼玉県の沿線住民は、東京の各所に出るためには必ず池袋駅で一旦乗降していた。必然として、そうした人たちが駅構内や周辺で買い物をすることで池袋の発展は支えられていたのだが、この路線の開通によってストレートに新宿や渋谷と繋がってしまったのだ。

 さらに2004年には湘南新宿ライン、2008年には東京メトロ副都心線が開通。特に副都心線は渋谷と池袋を繋ぎ、東武東上線や西武池袋線と相互乗り入れで直通運転を行ったために、埼玉県民は池袋をスルーして新宿や渋谷に出てしまうのではないかと危惧された。

 さらに池袋に対する危機感が露わになったのが2014年、池袋が属する豊島区が日本創成会議から全国に896ある「消滅可能性のある自治体」の一つに名指しされたことだ。

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JR埼京線 ©iStock.com

ワンルームマンションを作らせない措置に踏み切ったが……

 この状況の背景として指摘されたのは、池袋周辺のマンションが投資用の狭小ワンルームマンションばかりでファミリーが住めず、単身者も結婚をすると池袋周辺には適当な部屋がないので区外に脱出してしまうといった悪循環の存在だった。

 そこで豊島区は2004年に狭小住戸集合住宅税を導入して、マンションで戸当たり面積30平米未満の住戸を作る場合には、戸当たり50万円を徴収することにした。しかしこれだけでは効果は少なく、2014年には一定規模以上のマンションの新築にあたって、住戸面積は最低でも25平米以上とすることを条例で定め、事実上ワンルームマンションを作らせない措置に踏み切った。

池袋上空 ©iStock.com

 しかし、既に建ってしまっているワンルームマンションに集まったのは外国人で、その多くが中国人だ。池袋周辺のワンルームマンションは、平成バブル期にサラリーマンなどの節税用投資マンションとして販売されたものが多い。初めのうちは学生や若いサラリーマン層が入居していたが、建物の老朽化や競合の激化を背景に次第に競争力を失い、賃料も5万円から6万円程度に落ち込み、やがて外国人が好んで住むようになったのだ。

 2018年における豊島区の新成人のうち外国人が占める割合は38%にも達し、駅北口には中華料理店が林立、怪しげな風俗店も軒を連ねるチャイナタウンとなっている。