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連載NHK大河ドラマ「真田丸」の舞台 真田氏ゆかりの地をめぐる

第25回・最終回【安居神社】信繁最期の地

『真田三代』 (火坂雅志 著)

2016/12/18

genre : エンタメ, 読書

●仙台真田家の祖になった次男

 夏の陣の後、信繁の娘、梅(阿梅)は伊達政宗の重臣・片倉重長に引き取られ、妻となった(「真田系譜稿上」『大日本史料』)。片倉重長といえば誉田の戦いで信繁に煮え湯を飲まされた武将だが、なぜ重長は宿敵ともいえる信繁の娘を保護し、妻としたのか、その経緯はよくわかっていない。信繁は戦死の前に、伊達氏に自分の娘の保護を依頼したのか、大坂落城時に重長が信繁の娘の身柄を確保したのかのいずれかだろうが、現実問題として落城の混乱時に安全に梅の身柄を確保するのは、きわめて困難だと思われる。ちなみに、梅は「真田系譜稿上」によると信繁の正室である大谷氏の娘が産んだ娘とあるが、家臣・高梨内記の娘が産んだ娘という説もあり、真相は不明である。

 この経緯に関して、歴史家の岩倉哲夫氏は以下のような可能性もあると考えている。伊達氏の旧臣で大坂方にいた北川宣勝は、信繁とも親しい間柄だったようなので、この北川が伊達氏と連絡を取り、梅の身柄を託したのかもしれない。また、信繁の一番末の妹は伊達家中に嫁いでいたので、この辺の縁を頼ったことも考えられる。

 信繁の次男・大八も梅とともに重長の元で匿われ、その後片倉姓を名乗ったが、もし重長が梅を引き取った際、誰かに頼まれたと言おうものなら、大八の存在も疑われる危険性も生じてしまうので、あえて戦場で身柄を保護したと言い張ったのではないだろうか。大八の息子は真田氏に復姓して仙台真田家の始祖となった。その血筋は現在まで脈々と続いているわけだから、信繁の次男・大八が伊達家中で匿まわれた意味は大きい(現在の仙台真田家当主は13代・真田徹氏)。

 また、「真田系譜上」にある娘の「於しょぶ」は、葬地不詳とあるものの、別の系図には片倉重長の養女となり、同族の片倉金兵衛の妻になったとの記事もあることから、重長は信繁の子供を3人匿った可能性は高い。

 いずれにしても、信繁自身は討ち死にしてしまったが、真田の武名はより高まり後世にまで語り継がれ、その妻子は平穏に暮らし、その血と家も現代まで脈々と受け継がれた。知略や武勇だけではなく、その気配り・心配りには感服するほかない。この点も信繁が時代を超えて敬愛される大きな理由の1つだろう。

 

 幸綱(幸隆)から昌幸、そして信繁・信幸へ。周囲を有力大名に囲まれ、いつ滅ぼされてもおかしくないという過酷な状況の中、真田の血と家を絶やさぬため、遠い未来まで見据え、どんなに危機的状況においても知略と勇気の限りを振り絞り戦国の世をしたたかに生き抜いた「真田三代」の生き様から、現代に生きる我々が学ぶことは大きい。NHK大河ドラマ「真田丸」が終わった今、彼らの生き様を余すところなく描き切っている『真田三代』(火坂雅志)を読んでみてはいかがだろう。真田丸ロスが幾分か癒されるかもしれない。

真田三代 上 (文春文庫)

火坂 雅志(著)

文藝春秋
2014年11月7日 発売

購入する

真田三代 下 (文春文庫)

火坂 雅志(著)

文藝春秋
2014年11月7日 発売

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 今回、この連載の第11回から25回までの九度山・大阪編では、和歌山県橋本市在住の歴史家・岩倉哲夫氏に実際の現地をめぐりながら長年の研究と膨大な資料を元に詳しく解説していただき、記事の監修もしていただくなど、多大なるご協力を賜りました。厚く御礼申し上げます。また、九度山の真田ゆかりの地めぐりでは、九度山町産業振興課真田丸推進室の土岐嘉伸氏に、大阪では、NPO法人 大阪観光ボランティアガイド協会の島林豊氏と下村恵信氏に大変お世話になりました。ありがとうございました。そして、取材、撮影にご協力くださった各真田ゆかりのスポットの方々にも感謝申し上げます。

(左から)岩倉哲夫氏、土岐嘉伸氏、島林豊氏、下村恵信氏

 大阪に点在する真田氏ゆかりの地をめぐりたいなら大阪観光ボランティアガイド協会に申し込むことをお勧めします。コースはバリエーションに富んでおり、料金はなんと無料。歴史に詳しいボランティアガイドが各スポットに案内、丁寧に解説してくれるので楽に楽しく歴史が学べます。

●申込先・問い合わせ:
「NPO法人 大阪観光ボランティアガイド協会」
公式Webサイト→http://www.ovgc.jp/
現地問合せ先
大阪城パークセンター内
TEL:090-3059-6923、090-3493-9269(10:00~15:30 ※年末年始除く)
※申込みはこちら→http://www.ovgc.jp/entry/

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