昨年7月、“女優、創作あーちすと”としての活動を宣言した、のんさん初の著書は“創作あーちすと”にフォーカスした1冊となった。そもそも、どうしてアーティストではなく、“あーちすと”なのか。
「ビシッとしたアーティストに憧れはありますが、自分が名乗るのはおこがましい。自由にはっちゃけるための胡散臭さを保つために、“あーちすと”と言っています(笑)」
言葉通り、自由さに溢れ、かつそれが写真、読み物として抜群に面白い、奇跡的なバランスの本に仕上がった。出版社側からの提案は当初、のんさんの“ファンブック”だったというが、打ち合わせで、自身が数々のアイデアを出したことで企画は一変。のんさんが“やってみたいことをやる”1冊に。冒頭、のんさんがスタジオの壁、3着のドレス、さらに自身までをキャンバスに絵を描く姿が収められている。
「いただいたファンブック企画の中に、絵を描いていただくコーナーがあり、『それなら私も描きたい』と。前から絵を描くことは好きで、LINEスタンプを製作したりもしていましたが、今回はたくらまずに自分がその場で思ったままの表現が出来ました。ようやく自分が言い続けてきた“創作あーちすと”という言葉と、実際にやってることがフィットした感覚です」
さらに製作したドレスを着て富士山で撮影する、破天荒(?)なページに続く。
「単純に富士山に行ってみたいと思っただけなんですが、せっかくなら製作したドレスを着て写真を撮ることを思いついてしまい(笑)。本の構成としても、絵を描くシーンから一気に富士山に飛ぶことで面白いものに仕上がったなと思います」
後半は“憧れ対談”として桃井かおり、清水ミチコ、いのうえひでのり、矢野顕子、宇野亞喜良といったジャンルの異なるトップクリエイターとの対談などがあり、彼女だからこそ引き出せた言葉の数々は読み応え充分。
「憧れの皆様は自由でありながら誠実な空気を持ってらっしゃると感じました。矢野さんは、ライブ中にお客さんにリクエストを訊いておいて誰もリクエストしていない曲を弾いたり、その自由さに夢中になってしまうんです。桃井さんからは『のんちゃんが相手だからこんなこと話すのよ』と深すぎるお話をお聞きできました。元々、喋り下手なので積極的に表現について聞きにいったりする事があまり出来なかったので、こんな貴重な機会をいただけて、ほくほく得した気分です」
女優、創作あーちすとと二つの顔を持つ著者の、創作あーちすととしての魅力が全開。ドレスをペインティングしたと思ったら、それを着て富士山に向かう!? さらにはトップクリエイター5氏との対談に加え、のんさんが考えた、今回実現しなかった企画の数々を公開。ルーツを辿る故郷めぐりもあり。