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「ここってサーファーがよく来ますからね」

 “一ノ宮”という駅の名前からわかるとおり、上総一ノ宮駅はかつての上総国一ノ宮である玉前神社の鎮座する町にある。玉前神社の祭神は玉依姫命。言わずとしれた神武天皇の母で、すぐ東に広がっている太平洋からこの地に上陸したという伝説も伝わっている。戦国時代に社殿が焼け落ちたという記録があるようで、少なくともそれよりはるか前からこの地に鎮座する名社なのである。一宮の町はこの玉前神社を中心に、江戸時代の一宮藩の城下町としても栄えたようで、駅からすぐの中心市街地はそうした門前町・城下町にルーツがあるということか。玄関口たる上総一ノ宮駅が堂々たる面構えで建っているのも、町の歴史を知れば納得がいく。

こちらがかつての「上総国一ノ宮」である玉前神社。祭神は玉依姫命

 で、そんな立派な玉前神社で見かけたのが「波乗守」と名付けられたお守り。玉依姫命が波に乗って海から上陸した伝説に由来する……とあるが、それにしても珍しいお守りである。一体なんだろうと思って、市街地で見かけた地元の人に聞いてみると、「ああ、ここってサーファーがよく来ますからね」。また別の人に声をかければ、「昔からよく来ていたんですけど、最近はまた増えましたねえ。オリンピックがあるからでしょう」。

この日もサーファーの姿が。一宮はサーファーの聖地だった

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 不勉強にしてまったく知らなかったが、上総一ノ宮駅のある一宮はサーファーたちが集まる聖地のひとつなのだとか。2020年の東京オリンピックではサーフィン競技の会場でもあるというから、ホンモノである。実際、線路を挟んで駅舎や中心市街地とは反対側の海に向かって歩いていくと、サーファー向けのショップや飲食店、宿泊施設などがいくつもあった。そして海沿いに出てみると何人ものサーファーの姿。そのひとりに聞いたところ「電車で来ることはないですねえ」。まあ、サーフボードを担いで通勤電車に乗るわけにもいかないので無理はないが、少なくとも一宮がサーファーの町であることは間違いなさそうである。玉前神社の波乗守も、一宮がサーファーの町であることにちなんだのが本当のところのようだ。もしかしたら、玉依姫命は日本初のサーファーだったのかもしれない。