さらに、悪魔的美少年の2つ名を欲しいままにするジルベールは、破天荒な性生活を重ねているせいで、躰じゅうに小さな無数の傷があることも有名だ(※6)。この界隈では40年前から、「カラダじゅうに無数の傷」といえばジルベールなのだ。思い出してほしい、第1巻の初登場時、刃牙の、惜しげなくあらわにされた半身に、無数の傷が刻まれていたことを(※7)。「完全に一致」とはこのことではないか。
逆にジルベールが、地下闘技場に出場していた説までありうる。性愛の格闘家(グラップラー)・ジルベールなら、出会い頭にパンチしてくる男に、普通にキスとかするしセックスも3発はキメる。考えれば考えるほどに、刃牙さんとジルベールさんぐらいしか、『グラップラー刃牙』第1話は演じきれない。
われながらあまりにも説得的な弁論に気分がたかぶってきて、「さん」付けになってしまったが、そういった意味での期待を、刃牙さんにしているからこそ、自然と敬意も生まれる。供給が無さすぎて何もかもがB Lに見えていた、10代の頃の危険な心理状態に近くなっているかもしれないが、俺はこのB L飽食の時代に、せっかくだからこの「刃牙」を選んだのだ。悔いはない。
とはいえ、ここまでの真剣勝負を挑んでいるのに、まだ9冊しか読めていないのもまた事実。このままでは信念ではなく、単なる無知のせいで、「公式と解釈違い」を起こしそうな気配もぐんぐんにしている。頼むから一刻も早く、ブツが届いてほしい。鼻から吸わせてくれ。「刃牙」の濃厚なおじやを。
※6 出典: 竹宮惠子、『風と木の詩』(フラワーコミックス版)12巻(小学館、1980)11 8頁。
※7 出典:『グラップラー刃牙』1巻1話21頁。