社会学研究者であり、ボーイズラブ研究家でもある金田淳子氏の著書『「グラップラー刃牙」はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ』が発売された。格闘漫画の金字塔『グラップラー刃牙』をBLとして読み解く衝撃の同書より「その1 範馬刃牙の生い立ちがジルベールすぎる」を特別公開!
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人生で初めて、「刃牙(バキ)」シリーズを9冊(※1)読んだ私は、「濃厚なB L(ボーイズラブ)なのでは?」「乙女の必読書なのでは?」という想念が止まらなくなり、生活に支障をきたし、ついに直接対決を決心して全巻をポチった。そんなわけで、濃厚なおじや(※2)にまみれているはずの私だったが、電子でなく紙の本を選んだので、あいにく、ブツがまだ手元に届いていない。
そんなザコ状態で、まだ何か語ることがあるのか?と言われそうだが、ご安心あれ。9冊読んで、ちょっとWikipediaで概要を調べただけで、私の脳内はおじやでパンパンなのだ。
「刃牙」シリーズの表紙(通常版)を軽く眺めてもらうと分かるが、表紙を飾る主人公・範馬(はんま)刃牙は、『グラップラー刃牙』19巻ぐらいから美形度がめきめきと上がる。それまで少年らしい丸っこい目だったのが、大人っぽい切れ長の目になり、唇が紅く塗られるようになる。年齢相応の元気さや、持ち前の強さでなく、色っぽさが前面に出ている。何があったのか。目ざとい読者は、ここらあたりで刃牙が処男(しょじょ)ではなくなったのかもしれない、と気づくはずだ。(なお私はまだ読めていないが、その時が来たら、紙面を余すところなく注視する予定だ。)
男が美形で色っぽく描かれてるからB L?と鼻でせせら笑った者がいると思う。まあそういうことだが、そういうことばかりでもない。
ここで皆さんは手元のテキストを開き、この物語の冒頭、『グラップラー刃牙』1巻第1話を読んでほしい。刃牙が、空手道団体「神心会」館長・愚地独歩(おろち・どっぽ)から突然のパンチ攻撃を受けるくだりがある。このとき刃牙は、軽いバックステップでかわし、独歩の拳の先に「CHU♥」とキスをするのだ(※3)。
また金田さんの脳がおかしくなって幻を見てるな、と思った人がいるかもしれないが、これについては一切が事実なので、法廷で争ってもいい。このエピソード、B Lの第1話だとしても全く違和感がないし、むしろB Lの第1話であれ。
※1 現時点で、『グラップラー刃牙』1~3巻、『バキ』1~3巻、『範馬刃牙』1~3巻を読んでいる。このような読み方になった理由は、ウェブコミックサイトで無料になっていたから。
※2 『グラップラー刃牙』1巻第1話で、範馬刃牙が試合前に食べていたものの1つで、特大タッパに詰めてある。個人的にあまりにも印象に残りすぎた。「刃牙」シリーズで今後、おじやの出番があるかどうかは知らない。出てきてほしい。
※3 出典:『グラップラー刃牙』1巻1話44―45頁。