今村雅弘 復興相
「それは本人の責任でしょう、本人の判断でしょう」

毎日新聞 4月6日

©時事通信社

 名言、珍言、問題発言で1週間を振り返る。森友学園問題以降、安倍政権の内部、あるいは周辺の人々の発言がヒートアップしている気がしてならない。今週、もっともテンションが上がっていたのが今村雅弘復興相だ。

 問題の発言は4日の閣議後の記者会見でのもの。自主避難者に対する国と福島県の住宅支援が3月末で打ち切られたことについて記者から「国が責任を取るべきではないのか」「帰れない人はどうするのか」と質問された今村復興相は、「それは本人の責任でしょう、本人の判断でしょう」と回答。「自己責任か」と確認されると「基本はそうだと思う」と認め、「(不服があれば)裁判でもなんでもやれば(いい)」と言い放った。

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 納得しない記者から「責任を持って回答してください」と追及された今村復興相は激高。「無礼だ」「出て行きなさい」「うるさい」と怒鳴って会場を後にした。その日の夕方、記者団に「ちょっと感情的になってしまった」と陳謝したが、肝心の「本人の責任」「裁判でもなんでもやればいい」発言には一切触れず。「国の責任を放棄するな」と激怒した避難者たちの抗議運動が広がった後の6日、「『本人の責任』という言葉の使い方が良くなかった」と釈明したが、発言自体は撤回していない。

 被災者支援の先頭に立つはずの復興相の暴言に人々の怒りはおさまっていない。「政権の本音が露呈した」という指摘もあった(中日新聞 4月7日)。自主避難者を巡っては3月に前橋地裁で国と東電の責任を認める判決が下っているが、「自己責任」発言はそのあたりも完全にスルー。今村復興相が東電株を8000株所有していることとの関連も注目されている(日刊スポーツ 4月6日)。

 辞任を求める声に対して安倍晋三首相は断固拒否する姿勢を示しているが、「被災者に寄り添い、復興に全力を挙げる安倍内閣の方針に変わりはない」という首相の言葉が空々しい。ちっとも寄り添ってないじゃないの。

松野博一 文部科学相
「道徳を教えるために教育勅語のこの部分を使ってはいけないと私が申し上げるべきではない」

朝日新聞 4月5日

©文藝春秋

 教育勅語をめぐるやりとりも過熱している。3月31日、政府が教育勅語について「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」と閣議決定。松野文科相も4日の記者会見で同様の発言を行った。松野文科相は3月にも「教育勅語を授業に活用することは、適切な配慮の下であれば問題ない」と述べている。

 そもそも国有地の格安払い下げが大問題になっている森友学園で幼稚園児に暗唱させ、それを見た安倍昭恵首相夫人が感激して涙を流したり、「こちらの教育方針は、大変主人も素晴らしいと思っていて」と発言したりして注目を集めた教育勅語。森友学園と関係の深い稲田朋美防衛相も「教育勅語の精神である親孝行など、核の部分は取り戻すべき」と発言、菅義偉官房長官も「親を大切にとか、兄弟姉妹仲良くとか、教育上支障のないことを取り扱うことまでは否定しない」(時事通信 4月3日)と述べるなど、どうやら教育勅語は政府中枢に浸透しきっている。

「親孝行」や「兄弟姉妹仲良く」なんてことは教育勅語じゃなくても伝えられる。ならば、やっぱり教育勅語が好きな人たちは国家への忠誠心や自己犠牲の精神などを子どもたちに植え付けたいんじゃないだろうか。森友学園と一緒だ。

閣議決定による答弁書
「文書は職務上、作成したものではなく、組織的に用いるものとして保有していたものでもないことから、行政文書にはあたらない」

ANN NEWS 4月4日

 最近大活躍(?)しているのが、教育勅語関連でも登場した「閣議決定」だ。政府の意思決定を行う閣議で話し合われ、全閣僚が意思統一した結果が閣議決定となる。ここで言う「文書」とは、内閣総理大臣夫人付の職員だった谷査恵子氏が、森友学園の籠池泰典前理事長に送ったファックスのこと。つまり、谷氏は籠池氏からの問い合わせに対して職務ではなく私的に対応したということだ。えええ、そんなことするか?

 ちなみに3月14日には「首相夫人は公人ではなく私人である」と閣議決定している。昭恵夫人とお付きの職員たちが何をしても「私人」「私的活動」で押し通し、谷氏のファックスも「行政文書にはあたらない」と押し通す。すべては安倍首相が2月に国会で「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と断言したからだ。

 このまま押し切るつもりなのだろうが、だんだん疲れが見えてきているような気もする。ある官邸スタッフによると、安倍首相は悲痛な面持ちで「森友が終わっても、加計がまだ残っているからな……」とつぶやいていたという(『週刊現代』 4月8日号)。

今井尚哉 首相秘書官
「支持率はまだ下がるだろうが、マスコミがどう報じるかにかかっている」

『週刊文春』 4月13日号

今井秘書官(右) ©時事通信社

 森友学園問題について、まるで「忖度」を求めるかのような発言をメディアの記者に行ったのが今井尚哉首相秘書官だ。今井秘書官は、昭恵夫人に“事情聴取”を行い、森友学園が新設しようとしていた小学校の名誉校長を辞退するように迫ったという人物。谷査恵子氏にも詳細な聞き取り調査を行うなど、森友問題に関しては前面に出て対応にあたったという。

 ところで、『週刊文春』4月13日号に掲載されたスクープによると、東芝が1兆円超の赤字を出す原因となった原発の海外輸出事業を後押ししたのも今井氏だったという。民主党政権時代、経産省で資源エネルギー庁次長を務めていた今井氏は3.11以降も原発再稼働のために奔走し、首相秘書官となった12年12月以降はアベノミクスの具体策として原発の海外輸出プロジェクトを推し進めていた。今井氏を通して首相のお墨付きをもらった形となった東芝は“国策”として原発の輸出事業を行い、その結果、1兆円以上の赤字を生み出すことになった。

 原発、教育勅語、森友学園問題、東芝問題……バラバラなようでいて、全部つながっているようにも見える。しかし、追及されても結局は「閣議決定」と「忖度」で押し通すつもりなのだろうか。

金田勝年 法相
「『テロ等準備罪』は、共謀したことだけで処罰されることとされていた、かつての『共謀罪』とは大きく異なります」

FNNニュース 4月7日

©文藝春秋

 後半国会の焦点となっているのが、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する法案だ。共謀罪は「内心の自由が侵害される恐れがある」と批判を受け、過去に3回廃案となっている。今回も「監視されるのではないか」「無関係の人が逮捕されるのではないか」という懸念や批判に対して、金田法相は「『共謀罪』とは大きく異なります」とアピールする。

 ところが、この金田法相の答弁が「しどろもどろ」「二転三転」(テレ朝news 1月30日)と不安視されており、法案成立阻止に全力を注ぐ野党は金田法相の答弁に狙いを定めている。今後、国会でどのような答弁が行われるか注目していきたい。