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 借金返済が優先だから、保育園が雨漏りしても、雪かきができずに市民プールの屋根が崩壊しても、市の一存では修復工事1つ決められなかった。

 鈴木は国への働きかけを強め、2期目の折り返しの年だった17年3月、とうとうこの再生計画の抜本見直しを総務省が認めた。企業版ふるさと納税を活用しつつ、コンパクトシティ化に向け、認定子ども園の整備など未来志向の投資を可能にし、国の財源も引き出した。

夕張市長時代 ©AFLO

 最後は市民から「市長の給料をあげろ」という声も出たが、鈴木は8年の任期切れまで上げなかった。

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 38歳になった今年4月、若さと市政の実績を買われるかたちで当選した北海道知事は、夕張市に比して予算規模でじつに約250倍にもなる道庁を率いる。8月からは知事の給料・ボーナス・退職金の3割カットも始めた。

「小泉進次郎を超える政治家になるよ、彼は」

 アルタ前の演説に戻りたい。

 その日本を牽引する都知事が強い基盤を築けるよう、「絶大なる支持」を投票行動で示してほしい、と締め括っていた。〈ゼツダイナルシジ〉という言葉にアクセントをつけたところで聴衆を見渡した鈴木の姿は、1人ひとりに具体的な行動をするよう、要求を突きつけるように私は見受けた。

 私の横で、国会議員時代から石原慎太郎に仕える特別秘書の高井英樹も聞いていた。石原秘書軍団の中でも“一匹狼”で知られるが、直感的な洞察力は石原から重宝されてきたといわれる。そんな高井がつぶやいた。

「小泉進次郎を超える政治家になるよ、彼は」

小泉進次郎氏 ©文藝春秋

 地元ネタとユーモアを交えた応援演説が売りの進次郎は元内閣総理大臣の地盤を受け継ぎ「次の総理」の上位に必ず名が挙がる。対する鈴木は、貧困家庭に暮らした経験から都職員の道を選び政治の才を見出された。

 奇しくも2人とも昭和56年生まれだ。鈴木が知事になった今年、私には高井の「予言」が何度も思い起こされた。