パソコンなどのデジタル機器やネット上に遺る「デジタル遺品」。他人では詳細が分からないものが多い一方、実際に金銭的価値を持つものが増えているため、相続の場で問題化し始めている。一方、生活にすっかり根付いた感のあるサブスクや電子書籍だが、放置したまま契約者が突然逝ってしまえば、どんな事態を引き起こすのだろうか?
デジタルの相続術に詳しい「スマホの中身も『遺品』です」から一部を転載する。
認知度の高まる“サブスクリプション”
これから特に注意したいのが、毎月決まった額を支払うような、定額サービスの類です。
インターネット上における定額サービスとして、ファイルを保存するクラウドサービスや定額利用のオフィスソフトやフォトレタッチソフトはすでに定着していますが、一定期間の定額使用料を支払って商品やサービスを利用する形態はサブスクリプションと呼ばれています。
配信されたドラマや映画が見放題になる「Netflix」や「Hulu」、音楽が聴き放題になる「Spotify」や「AWA」、雑誌やマンガが読み放題になる「dマガジン」や「めちゃコミック」、衣類や家具をレンタルしたり、契約した喫茶店でのコーヒーが飲み放題になったりするサービスまで多種多様です。
マクロミルと翔泳社(MarkeZine)が2019年1月、1都3県の男女を対象に実施した共同アンケートによると、サブスクリプションのことを「よく知っている」「聞いたことはある」という人は3割弱に留まっていながら、使用したことがある人の割合は5割に迫る結果となっていました。
このサービスをうまく使えば、提供する側は在庫リスクを抑えられますし、利用する側は物品や権利を死蔵せずに、賢く契約すれば割安にリッチなサービスを得られます。時代の要請もあり、おそらく今後もその対象や市場はさらに拡大していくのではないでしょうか。そしてそういったサービスを、スマホのアプリを通じて管理しているケースも珍しくなくなっています。
契約者が死んでも自動で連絡がいくわけではない
カテゴリーの認知度より、実際の利用ペースのほうが優勢であることがその勢いを示唆しています。今後定額サービスの利用頻度はおしなべて高くなり、亡くなったときに支払いが継続している、といった事例が増加していくはずです。
これら“サブスク”も、基本的に契約者の生死が契約先に自動で届くことはありません。利用者側が何もしなければ、お金を支払う契約はそのまま続くことになります。
ところが、です。私は主要な定額サービスへの横断取材を2年に1回のペースで実施していますが、これまで「遺族からの問い合わせが多く届いている」といった話はほとんど聞いたことがありません。提供を始めて数年しか経っていないような新興サービスが多勢という事情もありますが、おそらくは提供元に相談せずにそれぞれの判断で対処している遺族が多いのではないでしょうか。