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多くの問題をはらむ自動契約解消

 実際のところ、複数の定額サービスを止めるもっとも手っ取り早い手段は、引き落とし先と思われる故人のクレジットカードを止めたり、銀行口座を凍結したりすることです。契約者が亡くなった後にそれらを止めた結果、紐付いている各種サービスの支払いも知らないうちに止まった、ということもあるでしょう。

 講演などで定額サービスの話をすると、「(亡くなった)家族も何か利用していたのかも」、とそこで存在に気づいたという感想をいただくことがあります。この方法によって無自覚に支払いを止めているケースは水面化ではかなりの割合でありそうです。

 しかし、この流れはいろいろな問題を含んでいます。
 
 契約解消についてはあくまで所定の手続きがあり、公式に自動停止を認めているサービスばかりではありません。そのため、規約上の問題が生じる可能性がありますし、オンラインストレージなど、ユーザーの編集物が保存されるサービスの場合は、それらの存在に気づかずに抹消してしまうリスクも負ってしまいます。もしその対応に追われる事態になったら、サービスの規約をできる限り調べ、個別対応を検討し、実行したうえで、あくまで最終手段として自動停止に頼る、というのがもっともトラブルや後悔を避けられる流れだと思います。

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イギリスで起きたペイパル騒動

 そうした意味では、支払い義務を残したまま亡くなるケースがあることも覚えておいたほうがいいでしょう。2018年7月に英国で報じられた、オンライン決済大手の「ペイパル」に関連する騒動は国境を越えて話題になりました。

 とある女性ががんで亡くなったため、そのパートナーはペイパル宛に、死亡したことの通達とサービスの解約を申請したそうです。するとペイパルは女性宛に「約3200ポンド(約47万円)の未払い分がある」との催促メールを送付。問題はそこに書かれた文面で、「BBC NEWS JAPAN」の記事ではこう翻訳されています。
「あなたが死亡したとの通知を受け取っていますが、あなたはペイパル・クレジット規約の15条4項に違反している状態です。(中略)この規約違反の状態は解決しません」

 木で鼻をくくったようなこの文面に対して怒ったパートナーはBBCへ情報を提供。その事実が報道されると、ペイパルは世間から非難を浴びることになりました。なお同社はすぐに謝罪し、債権を放棄しています。

 この件については、ペイパルが遺族に対して十分に配慮した文面を作成していれば、これほどの問題にはならなかったと思います。しかし、私たちがここで理解しておきたいのは、利用者の死後も支払いの催促が届くことがあるという事実です。

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 ネットショッピングやオークションなどで個別の支払いが発生した場合、購入者の生死にかかわらず、義務が解消されないのは現実の買い物と何ら変わりありません。ネットを介した買い物の機会が増えていけば、そうした単発の支払い義務が残されることは珍しくなくなっていくでしょう。個別のお金のやりとりにも、ある程度アンテナを張っておくことはこれから重要になるのかもしれません。