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箱根駅伝 ほとんどの選手が「ナイキの厚底シューズ」を履く驚くべき理由

箱根駅伝 ほとんどの選手が「ナイキの厚底シューズ」を履く驚くべき理由

2019/12/23
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トップランナーから市民ランナーまで、記録が出る理由

 2020年、ヴェイパーフライは3回目の箱根駅伝を迎えます。もともと2017年に誕生したのですが、履きこなすのは難しいシューズでした。しかしこの2年間でナイキは、ヴェイパーフライを履いたトップランナーから市民ランナーまでのビッグデータを蓄積して、それを第3世代の「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」というプロダクトに落としこんだのです。僕も履きましたが、これまでとは全然違うシロモノです。もともと接地のときに跳ねるような感覚があってそれが推進力となっていましたが、これまでのモデルは靴底の“スイートスポット”が小さくてシビアだったんです。そのスポットで着地し続けるには相当の技術と、そのための体づくりが必要だったんですね。野球に例えるならイチロー選手の細いバットみたいな感じです。小さなスイートスポットに当て続ける技術がないと、使いこなせない。

 ところがヴェイパーフライ ネクスト%はスイートスポットが面になっているような感覚だと思ってください。だからシューズを履きこなすためのトレーニングは必要ない。履けば誰しもが自然とこういう風に走ってくださいというフォームになるんです。

箱根駅伝予選会

ヴェイパーフライは高価すぎる、という人は?

 ラインナップが増えたのもポイントです。以前はヴェイパーフライの個性が際立っていたため、練習でもヴェイパーフライを履いて、体を作らないといけなかった。けれどもヴェイパーフライは高価な上に、品薄で、何足も揃えるのは難しかったんです。ところが今年、1万6000円ぐらいで買える「ズーム フライ3」というシューズが発売されました。ヴェイパーフライよりは少し重いのですが、カーボンプレートが入っていて、履き心地は遜色がない。ディフュージョンバージョンとしてはよくできた靴なのです。さらに長距離トレーニングに適した「ズーム ペガサス ターボ2」、トレーニング用の「フリー ラン」と、トレーニングからレースまで満遍なく使えるプロダクトが揃った。

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 ちなみに一般ランナーにはズーム フライ3がコスパ的にも一番おすすめできると思っています。ヴェイパーフライは高価で品薄なのでなかなか手に入らない。でもズーム フライ3ならお求めやすい。あまりに良いので、僕はローテーションできるように2足買いました。

 ヴェイパーフライは誰でも履きこなせるシューズになったと言いましたが、よりヴェイパーフライに向いた走りをする選手というのがいます。カーボンの跳ね返りを骨盤とみぞおちの間で受け止めて、みぞおちから上は上下動をせず、スーッと流れるように走るタイプです。

 今回の箱根駅伝には、ヴェイパーフライに向いた走りをする選手が3人います。