2日目のディナーは本丸「アラン・ウォンズ」で
もし未だに「アラン・ウォンズ(Alan Wong's )」というレストランを訪れてないなら、滞在中一度は訪問したい。ここは名実ともに、もう何年もハワイナンバーワンのレストランであり、今もなお進化し続けている。
アラン・ウォンシェフの母は日本人で、パートナーは日本でも芸能活動をしていた井上アリスだ。ずいぶん以前には、ここのメニューに「乾燥させたサーモンと海苔とあられと昆布をご飯の上に載せお茶をかけた料理」というものがあった。
「アラン・ウォンズ」では、安易にコースを頼むのではなくアラカルトに挑戦し、前菜とメイン、特に魚料理を中心にメニューを構成したい。周りを海に囲まれた地の利から、ハワイ近海で獲れる魚、オパカパカ、オナガ鯛が特に上質。肉料理も面白いが、バーベキューソースに代表される現地の味付けはどうしても甘めになるので、「アラン・ウォンズ」といえどもその傾向にあり、肉本来の味を消してしまっているような気がしている。
それから、「アラン・ウォンズ」に限らず、西洋のスタイルでキチンとパンがサーブされるレストランにおいても、メインディッシュには改めて主食がオーダーできる日本の食習慣ともいうべき流れが残っている。いわゆる「白いご飯ちょうだい」ってやつだ。
ハワイローカルはそれをスターチ、文字通りでんぷんと呼び、白いご飯、麦ご飯、そして前回紹介したタロ芋で作ったポイなどが選べる。もうこの習慣はなくなっているかと思って、2年前に「アラン・ウォンズ」を訪れた際、スターチに「ポイ」をオーダーしてみたら、しばし考えたのちに味噌汁のお椀に入れて持ってきた。
「アラン・ウォンズ」には予約が必要だが、入店時間を選ばなければ、到着日ホテルフロントに予約をお願いする形で間に合うと思う。なお、ハワイといえども、どこでもTシャツ、短パン、ビーサンで入れるというわけではない。「アラン・ウォンズ」のような店には、襟付きのシャツ、長ズボン、靴のスタイルで、少しおしゃれして出かけよう。
「アラン・ウォンズ」を出た後、余裕があれば広い道路を隔てて斜め前方向にあるバー「Pint and Jigger」をのぞいてみるのもいい。いかにもアメリカンなセンスあふれるカッコよくて居心地抜群の酒場である。
お腹にもスキマがあれば、今アメリカではやっていて日本でも流行の兆しがある、スライダーと呼ばれる小さなハンバーガーにトライしてみると楽しい。
3日目、路線バスで遠出プラン
少し路線バスに慣れてきたら、いよいよ元を取るための遠出プランだ。
3日目以降、ワイキキ~アラモアナを飛び出して、路線バスで行くオススメは3カ所。まずは、ホノルルのダウンタウン~チャイナタウンエリア。ここは、ステキなランチタイムを含めた午後の散策に適している。
アラモアナセンターの海側バス停から出るバスはこのエリアを回るか、経由して別の場所に行くルートがほとんどなので、ドライバーに「Chinatown?」と聞いてうなずけば乗り込み、道路標識や看板に漢字が見えてきたら降りる、といった乗り放題券の強みを生かせるゆるい感覚で十分である。
元々このエリアは、あまり治安がよくなく旅行者には推奨されなかったが、昨今はすっかり様変わりし、今やハワイでの食事にはもっともホットなスポットとなっている。というのも、昔ながらの小ぶりな建造物が多く残っていて、天井が高く飲食店に適しているのと、となりがホノルルのダウンタウンゆえ、多数のビジネス客が見込めることもある。ホームレスがいるし夜には酔っ払いも見かけるが、そんな環境も、どう考えても東京の池袋よりは安全だ。
オススメのランチタイムは、ダウンタウンからの客であふれ、アメリカのちょっとアッパーな日常ランチを垣間見るようで、まさに映画の世界である。
新しいレストランがオープンしたり目まぐるしく入れ替わってたりするので絞りにくい反面、そんなに広いエリアではないので、ぶらぶらと歩きながら決める、でも楽しいのではないだろうか。漢字ばかりの看板が突然、横文字と洒落たロゴが目を引くエリアに変わっていく。ビジネスマンが好みそうなネオアメリカン料理を筆頭に、ここにもハワイの第四世代、つまり大量移民以降の移住者によるアフリカ・中南米料理、ネオアジアな料理が台頭し始めてきている。
伊藤章良
イベントプロデューサー・食随筆家。食に関するエッセイ、レビューを執筆。新規店・有名シェフではなく継続をテーマにした著書『東京百年レストラン』はシリーズ三冊目を発刊。BSフジ「ニッポン百年食堂」で全国の百年以上続く食堂をレポート。