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その地に根付いて、育つ、新しい本屋紀伊國屋書店武蔵小杉店

2015/02/14

genre : エンタメ, 読書

note
グランツリー武蔵小杉。成長すると樹高100mを超えるものもあるセコイアが植樹されている。

 川崎市中原区、武蔵小杉地区は、多摩川の神奈川県側。JR南武線、横須賀線、湘南新宿ラインと東急東横線が乗り入れ、横浜、川崎、東京、品川、渋谷、新宿、目黒に一本で出られるその交通至便さから、近年人口が急増しているエリアである。駅周辺には、現在も建築中の高層マンションが多く、休日には近隣からの買い物客も集まる一大センターに育ちつつある街だ。

 紀伊國屋書店が武蔵小杉に新規出店をすると聞いたのは、昨年(2014年)の夏頃だったか、新店の店長に、新宿南店でSUPERワクワク隊という活動をされていた神矢さん(過去記事参照)が店長に就任すると聞いて、どんなお店になるのか、興味を持って見ていた。セブン&アイ・ホールディングス系のショッピングモール、グランツリーに紀伊國屋書店武蔵小杉店が開店したのは昨年11月22日、開店当初は駅から行列ができるほどの混雑ぶりだったが、少し落ち着いてきたようなので、取材をさせていただいた。

グランツリー武蔵小杉3階、紀伊國屋書店武蔵小杉店。

 紀伊國屋書店では、2013年のグランドフロント大阪店、2014年の武蔵小杉店と西武渋谷店と、積極的な出店が目立つ。社内には店舗開発のチームがあって、新店出店に際して出店計画や店舗コンセプト作りに携わっているとのことだが、武蔵小杉店の出店にあたっては、SUPERワクワク隊の隊長だった神矢さんにも、「なんか面白いこと」を期待されてプレゼンに協力せよと声がかかり、市場調査や店のコンセプト作りという初期の段階から参加した。店のフロア構成、書棚や造作、内装の選定、売り場の棚割、商品の仕入に至るまでかかわってきた。まだまだ細かいところで目の行き届かないところはあるものの、最初からかかわってきたことで店全体をわかっている強みは店長になってからも活かされているという。

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絵本売り場、親子で本を選ぶ楽しみを演出するスペース。
力を入れている学参売り場。

 お客様は、開店前の人口調査からも予測されていたが、近隣マンションの新しい住民と思われる子供連れが多く、絵本、児童書、学習参考書に力を入れている。絵本・児童書については、積み木をモチーフにしたキッズスペースを設け、開店以降のイベントも、アンパンマン、妖怪ウォッチ、かいけつゾロリと子供に人気のラインアップを揃えていて隙がない。一方、神矢店長によると、学習参考書については徐々に認知が高まって売れていけばよいと考えていただけに、開店直後からの売れ行きの好調ぶりは、うれしい誤算とのこと。

 それ以外のジャンルでは、趣味や料理などの実用書、文庫、新書はかなりのスペースを割いている。子供連れでショッピングのついでに来店した方が、気軽に買っていただけるということで、ここまでの売れ行きも好調という。

充実の文庫売り場。

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