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鉄道業界に大転換をもたらした「革新的アプリ」はなぜ200万ダウンロードを達成できたのか

2019/12/24

source : 週刊文春デジタル

genre : ライフ, ライフスタイル, テクノロジー, 社会, 企業,

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 帰省シーズンの新幹線・特急の予約が始まっている。最近ではJRの駅でも「みどりの窓口」のある駅が減っている。しかし、指定席券売機で購入するのは不安、という読者も多いかも知れない。さらに、私鉄沿線に暮らしていると、そもそもJR線の指定席券売機すら身近にない。

 そういった人の強い味方がネット予約である。その中でも、新幹線を利用する乗客の間で、急激に利用者が増えているのが、東海道・山陽新幹線の「スマートEX」だ。

 新幹線専用の「EXアプリ」で乗りたい列車を予約すれば、普段使っているSuicaやTOICA、ICOCAといった交通系ICカードを使って、チケットレスで新幹線の自動改札を通過できてしまう。

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「EXアプリ」は200万ダウンロードを達成 ©文藝春秋

 この「EXアプリ」は操作もシンプルで、サクサク動く。その上、予約している列車の発車時刻前なら、時間等の変更が手数料無料で何度でも可能なのもビジネスマンに人気の理由だ。今年11月末時点で、アプリのダウンロード数は約200万にも達している。

 この「スマートEX」、2017年9月にスタートしたばかりの新しいサービスで、利用するには、専用サイトなどで交通系ICカードとクレジットカード(どのクレジットカードでもよい)を登録するだけ。年会費は無料だ。

JR東海が注力したポイントとは?

 サービス開始から2年あまりの「スマートEX」の会員は、すでに約338万人に達している。なぜここまで急速に広がったのだろうか。

©iStock.com

 そのポイントは、ユーザーに使いやすいサービスに徹したことだろう。

「EXアプリ」の操作性について、JR東海は筆者の取材に、「シンプルな予約画面で、かつ操作性もスムーズであることや、スピーディーにログインできることなど、煩わしさを感じさせないようにしています」と説明している。

 JR東海が注力した「シンプルで使い勝手のよい操作性」。それを実現するために、2つのことに取り組んでいる。

 1つは、「スマートEX」で取り扱う列車を、東海道・山陽新幹線に限定したこと(2022年から九州新幹線にも対応予定)。

「スマートEX」の予約画面 ©文藝春秋

 もう1つは、スマートフォンの小さな画面で利用しやすいように、画面上で案内する「駅数」や「列車の種類」などが、少なくてすむように工夫したことだ。

 普通きっぷを買うとき、東京から新大阪に行くだけでも、「東京都区内から大阪市内への乗車券」「東京から新大阪までの特急券」と、別々のきっぷを購入する必要がある。

 このサービスなら、細かなきっぷのルールを知らなくても、「区間」「時間」を指定すれば新幹線の予約ができる。この「直感的な予約」を実現したのが支持拡大の大きな理由だろう。