5月6日より全国で順次公開される映画『八重子のハミング』は、升毅(ますたけし)さん演じる4度のがんと闘った夫が、アルツハイマーの妻(高橋洋子さん)と寄り添い生きた、実話を基にした12年間の物語だ。
「原作者でモデルでもある陽(みなみ)信孝さんと八重子さん夫妻のドキュメンタリーや原作本を事前に見ていましたが、撮影前に人物像を構築できない経験は初めてでした。実在し、いまも生きる人を作り込めば、作品が伝えようとする“事実”は嘘になってしまうからです。台詞は頭に入っているのに魂のようなものが湧いてこない。役者として不安でした。でも佐々部清監督や洋子さんに身を委ねるなかで、役が確かなものになりました。それは、繰り返し台本を読み、何度も涙した疑似体験から得たのだと思います」
撮影は、陽さん夫妻が暮らした山口県萩市で行われた。
「老いや介護の日常を誇張せず真摯に演じることはとても難しかった。でも、撮影のお手伝いをしてくださった地元の方々から、私や洋子さんの歩き方や佇まいがそっくりだというお声をいただきました。元気だった頃からの夫婦の歩みを描くことで、老老介護のひとつの現実と、最愛の人が老いることとはどういうことかを考えるきっかけになる。そういう映画だと思います」
『八重子のハミング』
5月6日より全国で順次公開 http://yaeko-humming.jp/