フジテレビ時代に『ごっつええ感じ』、『SMAP×SMAP』、『笑う犬』シリーズなど数多くのコント番組の制作、演出で活躍した小松純也さんは、笑福亭鶴瓶の落語会演出も手掛けるなど、常に挑戦をし続けている。古巣のフジテレビが苦境に喘ぐなか、これからのテレビはどこへ向かうべきなのか。現在はNHKやTBSでも新しさを追求し続ける小松さんに新しいことをやり続けるための仕事論をお伺いした。

小松純也さん ©三宅史郎/文藝春秋

笑福亭鶴瓶を「落語家」に回帰させた舞台

――テレビ以外では笑福亭鶴瓶さんの落語会「鶴瓶のらくだ」(2007年)の演出もされていますよね?

小松 鶴瓶さんとはあんまり世間にはバレてないですけど、それまでも深夜でコソコソ番組をやってたんですよ。もうちょっとバレたかったんですけど(笑)。それで、僕は舞台もやっていた人間(劇団そとばこまち出身)なので、鶴瓶さんの事務所の方から声をかけてもらったんです。鶴瓶さんの落語家として生きていく決意表明みたいなものをやりたいと。その落語会の見せ方として、落語を知らないアナタに任せたいと言われて。

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「鶴瓶さんの葬式という設定から始まるんです」(「鶴瓶のらくだ」、祭壇を使っての演出)

――どんな演出だったんですか?

小松 鶴瓶さんの葬式という設定から始まるんです。その落語会の演目「らくだ」というのは、簡単に言ってしまうと人が死んで、その死体をどうするかっていう噺なんですけど、それにちなんでいるんです。最初に鶴瓶さんが出てきて、最近こんなことがあったと話をして、「ホンマ、スタッフ頭おかしいんですよ」って言って幕を開くと舞台全面に鶴瓶さんの祭壇がある。で、鶴瓶さんが遺影のところに入るんです。司会者が、舞台上で「鶴瓶さんが舞台上で死んだ」と説明して、タモリさんや(明石家)さんまさん、(中村)勘三郎さんからの弔電を読む。そんな前フリのあとで、舞台上で鶴瓶さんが死んだ日の落語会が始まり、最後に「らくだ」を演る。

「鶴瓶のらくだ」 撮影:大西二士男 ©フジテレビ

 サゲまで行って頭を下げた鶴瓶さんが舞台上で死んだように動かず、葬式に戻り、鶴瓶さんの棺が花道から運び去られ、幕が閉じかけるんだけど、再び開くと、「らくだ」の死体のように棺桶から落っこちた感じで舞台上にそのまま居た鶴瓶さんが、ゆっくり顔を上げて、鶴瓶さんオリジナルの「らくだ」の死体が息を吹き返す噺になり、サゲになる。終わって拍手の中明転すると鶴瓶さんの遺影があった場所に(笑福亭)松鶴師匠の大きな写真。それを背負って鶴瓶さんがお客さんにご挨拶。という流れです。

 松鶴師匠は鶴瓶さんの師匠で「らくだ」が十八番だったんです。今日はその「らくだ」をやって、師匠の遺影を前に皆さんに挨拶させていただきます、笑福亭鶴瓶は再生し落語家として生きていきます――そんな決意が伝わればいいなと演出したんです。