中国に対し強気の要求を行った安倍首相
日米同盟を基軸とする日本の安倍首相は、三首脳の中で最もトランプ大統領とのパートナーシップを重視する立場だ。首相は日中韓首脳会談の冒頭で「(日中韓の)協力の前提は、お互いにウィン、ウィン、ウィンの関係を築き上げることだ」と強調したうえで、「北朝鮮情勢をはじめとする地域の重要な課題、めまぐるしく変化する世界経済情勢を踏まえた国際経済秩序の強化、国際社会共通の問題である地球規模課題への対応について、3カ国の連携をいっそう深める機会にしたい」と述べた。
日中首脳会談においては、安倍首相は中国に媚びた文在寅氏とは対照的に、日中間に横たわる諸懸案について習主席に堂々と強気の要求をした。まず、尖閣周辺での中国側の独善的行動について、「東シナ海の安定なくして、真の日中関係の改善はない」と善処を促した。そのうえで両国首脳は、自衛隊と中国軍の偶発的衝突を回避する「海空連絡メカニズム」などを通じ、海洋安全保障分野の協力を進めることで一致した。
また、安倍首相は2015年以降、中国では少なくとも15人の邦人が拘束され、9人が実刑判決を受けたことを踏まえ、拘束された邦人の情報を速やかに提供し、早期の帰国を実現させることも求めた。
「自由」「民主」「人権」などを求める市民と警察当局との衝突が続く香港情勢についても、「大変憂慮している」と懸念を伝え、冷静な対応を求めた。そしてウイグル族の弾圧にも、「国際社会に透明性をもって説明すべきだ」と伝えた。
文在寅大統領は徴用工問題の解決策を示さなかった
安倍首相の発言の背景には、強固な日米同盟の存在がある。首相は、日中首脳会談の場が、トランプ氏の眼から見れば、日米同盟の強固さを実証するステージになると意識している。その一方で、来年春に予定されている習氏の国賓訪日(反対論がある)に向けて環境整備を進めることも約束した。これにより、我が国が米国一辺倒ではなく、中国にも一定の配慮をしている姿勢を改めて示したわけである。
1年3カ月ぶりに行われた日韓首脳会談で安倍首相は、最大の懸案である、元徴用工問題判決で生じた日韓請求権協定違反の状態を早期に是正するよう強く求めたが、文氏は解決策を示さず平行線を辿った。両首脳は解決のため、対話を続けていくことでは一致した。
日韓首脳会談を見る限り、韓国の反日政策には何ら変化はないようだ。日韓関係は文在寅が退陣するまで好転が望めそうもない。米中覇権争いという文脈の中では、韓国は依然「中国陣営」に逃亡する可能性は否めない。
朝鮮半島は依然「世界の火薬庫」だ
以上のように、米中覇権争いの視点から見れば、日中韓の対米・対朝スタンスは従来と変化はなく、韓国が中国に取り込まれる恐れがあることは明白だ。
日中韓首脳会談が行われた12月24日は期せずして、キリストが誕生したクリスマスを祝う前日だ。神は「終末」に向かうかのような、混乱する世界情勢をどうご覧になるのだろうか。現実の世界では、朝鮮半島は依然世界の火薬庫である。北朝鮮が「起爆装置」となり、米中という巨大な「火薬」に点火するメカニズムが存在する。
今回の日中韓首脳会談は北東アジア、なかんずく朝鮮半島の安定に寄与することが期待されたが、結果を見る限りほとんど進展はなかったようだ。朝鮮戦争以来続いてきた危険な「火薬庫」が安全化する日は来るのだろうか。