一昨年に流行語となった「爆買い」現象だが、昨今はむしろ「爆買いの終焉」のほうが話題となっている。事実、2016年のゴールデンウィークごろから訪日中国人客の消費金額は明らかな前年比マイナスの傾向を見せはじめ、ひところに比べて銀座の百貨店街でも中国人客の姿は大きく減った。いわく、彼らの目的は従来のような買い物ツアーではなく、スキーや温泉など日本でしか得られない体験型の旅行にシフトしつつあるともいう。訪日客の一部がリピーターで占められるようになり、かえって日本で無駄遣いをしなくなった影響もありそうだ。

 だが、100万円単位のブランド品をポンポン買わなくなっても、富裕層の消費行動はやはり大したものである。そう感じさせる出来事が4月上旬にあった。私は、桜を見るために週末を利用して日本に遊びに来た中国の友人のガイド兼通訳をつとめることを条件として、2日間の密着取材をさせてもらったのである。

 彼女は私の留学時代の同級生で、1人あたりGDPが中国主要地域1位の金持ち都市・広東省深セン市出身の30代前半の女性。某大手国有企業の幹部ファミリー(どのくらい偉い人かは詳しく教えてくれない)に属し、本人も同社の社員である。中国の一般的な庶民ではなかなか取得できないであろう、3年間有効の日本のマルチ訪問ビザも持っている。今回は大学生である従妹と連れ立っての訪日だ。

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 友人の初訪日は学生時代に1回。その後は日本とまったく縁のない日々を送っていたが、近年の日本旅行ブームを受けて、ここ2年間で3回訪日するリピーターになった。日本語は買い物会話がなんとかできて、間違いだらけのひらがなを書ける程度のレベルだ。

©安田峰俊

 以下、時系列に彼女たちの訪問先と出費金額をメモ形式で紹介していこう。ちなみに女子大生の従妹は日本に来ても四六時中スマホゲームやチャットアプリをいじっており、私とあまり打ち解けなかったので、ここではもっぱら上記の友人の消費行動を詳しく記す。中国人個人観光客の立場からニッポンを眺めなおした2日間は、なかなか面白い体験であった。