チャイナ観光マネーにどこまで頼るかという難題
――いかがだろうか? 週末の実質2日間の日本滞在で、いわゆる「体験型」のアクティヴィティ(新宿伊勢丹でのメイクと夜桜見物)を堪能し、宿泊費や交通費を除いても合計20万円以上を爆消費し、グルメもフルに楽しんで帰る……。今回の取材対象はあくまで一例にすぎないとはいえ、現在の訪日旅行リピーターの中国人の素顔が少し見えてくる話ではあるだろう。たとえ大規模な「爆買い」現象が終わっても、彼らや彼女らはやはり無視できない消費の主体である。
彼女らの行き先にはどこにでも他の中国人客がおり、また中国語を話す店員たちがいた。昨今の首都圏のインバウンドの現場はいつのまにか、ほとんど中国語(と多少の英語)だけで大部分の用事が済むほど、中国人観光客に優しい仕様になっているらしい。支払いも銀聯カードから支付宝や微信支付(どちらも中国の電子マネー)まで各地で幅広く使えて、ほとんど日本円のキャッシュを財布から出していない。
もちろん、中国人客のインバウンド消費への過度の依存は、先日紹介した韓国の例のように、対中関係が悪化した際に観光マネーを政治的取引の材料に使われるリスクがある。日本における観光産業の対GDP寄与率は韓国の半分以下で、韓国と比べて中国人観光マネーが国家経済全体に与える影響は限定的とはいえ、どこまでを受け入れてどれ以上のラインを拒むかの判断は悩ましい問題だ。
だが、それでも多額のお金を使ってくれるお客様なのは確かである。しかも本稿で見たように、日本に好感を持つ訪日旅行のリピーターの多くは政治・経済の両面で中国社会の上層に属しており、ヘタな草の根友好運動や行政主導のクールジャパン政策よりも日中関係の安定化に寄与する効率性は高いと思われる。
彼らとどう向き合うかが、今後の日本の大きな課題のひとつなのは間違いないだろう。