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なんだかんだでゴージャス消費の珍道中

<1.新宿 京王デパート8階 京懐石「美濃吉」>

 前日夜に成田空港に着いたという相手と、午前11時に新宿西口で待ち合わせ。近所の京王デパートをしばらくぶらぶらしてから、日本っぽい料理が食べたいと言い出したのでレストラン階の8階へ。友人はスマホで評価を調べはじめ、京都の名門懐石料亭の支店である「美濃吉」を躊躇なくチョイス。複数ある京弁当の個々の違いを私が中国語でどう説明するか迷っていると、店員さんが英語のメニューを持ってきてくれた。

 ランチ懐石に舌鼓を打ち、3人計で1万円ちょっとを銀聯カードで支払ってから、従妹が「ここは寿司屋じゃなかったの?」と言い出す。

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<2.ドン・キホーテ歌舞伎町店>

 食後に東口方面へ歩いて歌舞伎町ドン・キホーテへ。まずは4階のブランド階へ直行。大量のヴィトンの鞄を前に「これは本物か偽物か」を私に何度も確認するので「すべて本物」と答えたが、結局はここでは買わず。自分用の2万円のブローチと、「どうでもいい知り合い用」の3千円くらいの小物を何品か購入してから2階の化粧品・薬品階へ。

 歌舞伎町ドンキの2階は中国人だらけの爆買い仕様となっており、化粧品コーナーには中国人のコンシェルジュまでいる。友人らと中国語で会話していた私が「〇〇はありますか」と日本語に切り替えてコンシェルジュに話しかけると「へ?」という顔をされたので、同じ質問を中国語で尋ねなおす。ここはどこの国だ。

 ちなみに店内の外国人向け免税購入専門カウンターでは、日本人店員のお姉さんが「これ、両個都没有。これ、有。便宜は不可以」と中国語と日本語のチャンポン言語で話しており、さながら満洲国の市場の会話みたいになっていた。友人はこの階でも化粧品と薬品を数万円分購入。ほかに3万円相当分量のカラーコンタクトを入手しようとしたが、在庫が足りず残念がる。

爆買いの殿堂・歌舞伎町ドンキの免税専用レジ。このフロアの共通語は中国語だ。 ©安田峰俊

<3.ビックロ>

 ニンテンドースイッチを買おうとして数店舗をウロウロするが、すべて品切れで悔しがる。「本当はピンクの限定版のやつが欲しいんだけど」。……一般店舗には置いていません。彼女の従妹がビックロに残るようなので一旦分かれて先に進む。

<4.新宿伊勢丹1階 資生堂ブース>

 友人は学生時代以来、普段ほとんどメイクをする習慣がない(30代の中国人にはそういう人も多い)が、ネットで見た日本風のメイクを試したいと伊勢丹1階の化粧品フロア・資生堂ブースへ。驚いたことに中国人客が大勢おり、美容部員の言葉を訳す百貨店側の中国人通訳も大量に配置されているという不思議な空間がここにも広がっていた。

 さっそくメイク開始。私が彼女の従妹を迎えに行ってから数十分後に戻ってくると、資生堂の魔力で松嶋菜々子みたいな顔に変身した友人がいた。本人はいたく気に入ったらしく、メイク中に使用した化粧品をまさかの全品買い。合計5万2280円。

ずらりと並んだ「フジンケショウヒン」の数々。恐るべし。 ©安田峰俊

 時刻は夕方。美容部員からのメイク体験中、左隣にいたのは別の中国人客で、右隣にいたのは新宿2丁目にこれから出撃するニューハーフのお姉さん。その後も1時間くらい、友人は従妹と2人で「人妖!」「人妖!」(中国語でニューハーフの意味)と盛り上がっていた。

<5.千鳥ヶ淵>

 桜が満開の時期だったので九段下に移動し、千鳥ヶ淵で夜桜を眺める。尋ねてみたが、同じ花見スポットでも靖国神社には行きたくない(というか一切興味がない)らしい。夕食はこちらがごちそうして1日目は解散。

<6.御殿場プレミアム・アウトレット>

 翌日、御殿場アウトレットへ。昼食に「寿司を食べたい」とのことでアウトレット内の寿司屋にいき、注文を任されたので私が地魚盛りとウニ・イクラのセット(いずれも美味)を頼むと「中国の寿司屋みたいにサーモンとウナギだけ食べたかった」「他の生の魚は気持ち悪い」と、従妹と2人による理不尽な抗議を受ける。寿司の神様に謝ってほしい。計1万2000円。

 ちなみに当日の友人は、頭は引っつめ髮、服は原色の青地に白のハートマーク入りのセーターとケミカルウォッシュのジーンズ、足元は赤のハイテクスニーカー、ただしバッグはプラダ、顔は新宿伊勢丹仕込みのメイクで松嶋菜々子……というわけのわからない姿で、プラチナの銀聯カードをメンコのように叩きつけ、コーチの2万円の小銭入れを無造作に3つ買いあさっていた。会社の同僚向けのおみやげらしい。

 その後、さすがに服装が周囲から浮いていると思ったらしく、通りすがりに目についたアパレルブランドで、中国人店員に希望を伝えてフルコーディネートさせて全買い。5万4600円。御殿場アウトレットでは富士山が見られたのもうれしかったという。

春のコーデは完璧だ。ただし、靴は赤のハイテクスニーカーのままである。 ©安田峰俊

 都内に戻り夕食。「日本酒」は日本のお酒すべてを指すと思っていたらしく、メニュー表の甲州ワインや薩摩芋焼酎を指差して「どの日本酒がおいしいですか」と言う。翌日月曜日の朝の香港航空で帰国なので、東京駅前から成田行き1000円のシャトルバスに乗せて見送り解散。