文春オンラインで実施した今年のベストドラマが決定した。(#1ですべてのアンケート結果を公開中)
上位3作――失敗しない女医が病院にはびこる不正を糺す『ドクターX~外科医・大門未知子~』(主演・米倉涼子)、池井戸潤原作の企業ラグビーもの『ノーサイド・ゲーム』(主演・大泉洋)、北海道の開拓とアニメの黎明期のあわせ技、朝ドラ100作記念作『なつぞら』(主演・広瀬すず)は接戦で(とくに『ノーサイド~』と『なつぞら』)、どれが1位でもおかしくなかった。
テレ朝の“局の顔”となった、大門未知子と杉下右京
『ドクターX』と『なつぞら』は視聴率と人気が共に高いドラマで、『ノーサイド・ゲーム』と4位の、オリンピックと落語のあわせ技『いだてん~東京オリムピック噺~』(主演・中村勘九郎、阿部サダヲ)は視聴率的には高いとはいえないものの、いわゆる“視聴熱”の高いドラマであった。とりわけ『いだてん』は視聴率的な苦戦とは逆にSNSでの反響が大きかった。
アンケート結果から読み取れることは、「王道」、「安心」。 “NHKの朝ドラ”(なつぞら)、“TBSの日曜劇場”(ノーサイド・ゲーム)、 “NHKの大河ドラマ”(いだてん)と昭和から続くブランド枠の強さだ。5位の、フレンチ三ツ星を目指す『グランメゾン東京』(主演・木村拓哉)も“日曜劇場”。そして、それらを“テレビ朝日の木曜ドラマ”(ドクターX)が抜いたのは、木曜ドラマ(木曜9時枠)がブランド化したと言うよりは、『ドクターX』というタイトルが、7位の『相棒』共々ブランド化したと言えるだろう。
テレビ朝日はほかに『科捜研の女』も安定の人気で、子供にはドラえもんやクレヨンしんちゃん、高齢者には大門未知子や右京さんや榊マリコという明瞭なキャラクターで幅広い視聴者にアピール、局アナ以外の“局の顔”を確実につくりあげていることは強みになっている。
テレビ離れの若者から支持を集めた「日テレ・新日曜ドラマ」
朝ドラ、大河、日曜劇場、テレビ朝日のキャラ戦略という安定のドラマシリーズ以外で着々と育っている枠が、6位のマンション住人総参加の殺人ゲームを描いた『あなたの番です』(主演・田中圭、原田知世)と10位の教師が生徒を監禁するサスペンス『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(主演・菅田将暉)を制作した日本テレビの日曜よる10時30分の“新日曜ドラマ”。2015年からはじまり18年のコメディ『今日から俺は‼』からにわかに注目されてきた。
テレビ離れしている若者に受けている稀有な枠で、シニア向けのオーソドックスなミステリーとは趣を異にする新種のミステリー路線が人気を集めている。『あなたの番です』は犯人探しの「考察ブーム」が起こりSNSを盛り上げた。
新日曜ドラマが22時代と時間帯的には不利にもかかわらず、視聴率的には徐々に大河ドラマをも脅かす存在になりつつある。そのわけは、「ちょんまげ」「着物」「日本刀」がアイコンとなる時代劇を多く扱う「大河ドラマ」よりも、視聴者に身近な現代を描き、幅広い層が楽しめるドラマが好まれていると考えられる。その点、『いだてん』は近代劇で、これまで大河を見なかった層に強くアピールした(『いだてん』の視聴率と熱の差に関しては後述する)