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凪のお暇、わた定、朝顔……なぜ“現代女性が自分らしく生きようとする”ドラマが人気だったのか

キーワードは「王道・安心」――2019年ドラマ総決算

2019/12/30
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 また、『孤独のグルメ』(主演・松重豊)や『きのう何食べた?』(主演・内野聖陽、西島秀俊)など“食”のドラマも人気。それもまた、消費型グルメものではなく、おひとり様、ゲイのカップルなどを主人公に多様な生き方を肯定し、代え難い自分たちだけの幸福のあり方を探求する物語であることが支持される理由であろう。

安定の大河ドラマ枠に揺さぶりをかけた『いだてん』

 地道に多様性を尊重しようとする時代に寄り添いながら、もう一歩先を見据えていたように感じるドラマが『いだてん』だった。

『いだてん ~東京オリムピック噺~』記者会見の(左から)阿部サダヲ、中村勘九郎、宮藤官九郎 ©️文藝春秋

 明治から昭和にかけてオリンピックの長い歴史を縦軸に、走ることが好きな金栗四三、オリンピックが好きな田畑政治、落語が好きな志ん生が度重なる困難を突破し各々の正義を貫いていく熱い物語。そこに政治の好きな人物などが加わって、時として互いの正義が相容れないこともあるという人類史はじまって以来の難題に向き合い、安定の大河ドラマ枠に揺さぶりをかけた今年最も刺激的なドラマだったが、イベントとしてのオリンピックの盛り上げ企画ではないかという誤解や、オリンピックと落語が並行して描かれることへの戸惑いを生み、多くに届かなかったことは惜しかった。

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 堅実志向から新機軸まで、ドラマ豊作の年だった2019年。堅実志向はこのまま続くのか、それとも令和になって潮目は変わるのか、2020年(令和2年)にも注目していきたい。

凪のお暇、わた定、朝顔……なぜ“現代女性が自分らしく生きようとする”ドラマが人気だったのか

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