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息子を産んだ1年後に妻の「がん」発覚という絶望 なぜ46歳の夫は「実は不幸でもない」と思えたのか?

“死”が身近になって感じた“生”

2020/01/13
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「ずっとがん患者だったわけじゃねーわ!」

 しかし、シンクロニシティだとか「なにかしら意味があるのでは?」という考えは救いにもなるが悩みにもなる。2年連続で“10月”にとんでもない大事が起きたせいで、この月にまたなにか起こるのでは……? 秋めいた心地良い空気が凍りついた。

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「去年は俺が外に出ている間に病気がわかったんだな……」と嫌なジンクスを作り上げて10月末は一歩も外に出なかった。息子の送り迎えも拒むので妻に怒られたが、理由を話したらもっと怒られた。

 11月に入って1年後検診の結果が出る日も不安になってしかたがなかった。大事な打ち合わせがあるが、またもジンクスがチラついて外に出るのを怖がる俺。するとまたしても妻が憤怒。「去年はがん検診なんかやってないじゃん。ずっとがん患者だったわけじゃねーわ!」と叫ばれてハッとなり、打ち合わせに向かった。結果は異常なし。打ち合わせではうな重の松をご馳走してもらい、はなからそんなものはないのにジンクスを破ったと脳内で快哉を叫んだ。

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 こうして1年目をなんとかクリアできたし、妻も息子も元気いっぱいで我が家は“生”に溢れている。2年目の秋も、俺だけがグタグタとウダウダとヘラヘラとしながらも乗り切っているんじゃないかと思う。

保育園で「最近ママ見かけないけど元気?」と言われて……10歳年下の妻が「がん」46歳男の惨めさ から続く)

息子を産んだ1年後に妻の「がん」発覚という絶望 なぜ46歳の夫は「実は不幸でもない」と思えたのか?

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