メガネの着用を前提としたルール作りを
とはいえ、やはり職場で掛けるとなれば、シーンや服装に相応しいメガネ選びも必要となってくる。外見のイメージを重視するというのなら、単に着用NGとするのではなく、着用を前提としたうえでのドレスコードの取り決めをするのもひとつだろう。
「古くからメガネに対してマイナスイメージがあるのは、昔はあまりデザインの選択肢がなかったという時代背景もあるのかもしれません。現在、デザインはかなり多様化しています」
創業130余年という眼鏡店の老舗であり、百貨店にも売り場を展開する金鳳堂の売り場スタッフは、そう話す。同店では、職場の雰囲気や求められるイメージ等を伝えれば、それに相応しいスタイリングの提案を受けることができる。
「職場の雰囲気により華美なデザインを控えたいという方には、肌に乗せた際に目立たない色やフチのないデザイン、細身のメタルフレームなどを提案しています。また、パーソナルカラー診断の結果から、自分の肌に相性が良さそうな色を選ぶのもひとつでしょう」
ネット上では“着物にはメガネが似合わない”との理由で着用を禁じられた飲食店についても話題になっていたが、「着物にメガネがNGというマナーは聞いたことがありません。現に、同じ百貨店内の着物売り場ではスタッフの方がメガネを着用しています。フォーマルなシーンでお使いの場合シンプルな金枠等をお薦めしていますが、紬やウール等のカジュアルな和装、レトロモダン系の着物なら、主張の強いメガネを合わせてもお洒落だと思います」と話す。
メガネが悪目立ちしてしまうのは、デザインだけに要因があるわけでなく、自分に合っていないサイズを選んでしまっているという場合もある。また、ズリ落ちているとだらしなく見えるので、お店でこまめに調整してもらうといいだろう。
その苦悩は母になっても続き、やがて連鎖する
今回の件で、まだまだメガネへの偏見が根深いことが浮き彫りになった。これをきっかけにメガネ禁止であった職場が着用OKになったとしても、偏見が残っている限りは無理にでもコンタクトを選択するという人も多いだろう。
「メガネを掛けていると冷たく見える」
「メガネを掛けていないほうが素敵に見えるのに」
わりと当たり前に言われるそんなひと言が、ときには相手の眼の健康を害してしまう可能性もある。
「メガネを掛けているとイメージが悪い」と言われ続けた女性が、母親になり、子どもにメガネが必要だと言われたら、最初素直に受け入れられないのも当然だ。その事実にショックを受け、眼科や眼鏡店で泣いてしまう母親もいると聞くと、本当にいたたまれない気持ちになる。泣いている母の姿を見たら、子どもはどう思うだろうか。
2019年度学校保健統計調査では、裸眼視力が1.0未満の中学生は57.47%、高校生は67.64%という結果が出ている。これからますます多くの人がメガネを必要とすることは明らかだ。もっと多くの人が、メガネを気兼ねなく、前向きな気持ちで掛けられる世のなかになってほしいと切に願う。