新聞を擬人化するなら“おじさん”だと思うのですが、新聞おじさんが若者に上から目線になれる季節ネタがふたつある。それは「成人の日」と「新社会人デビュー4月」のときだ。
4月もそろそろ終わる。今年は各新聞が新社会人をどう記事にしたかウオッチしていこう。
「朝日」のリベラルおじさんあるある、「読売」のおじさんアドバンテージ
多くの職場で入社式がおこなわれた4月3日の朝日新聞「天声人語」はこう書いた。
《新社会人となるのは、無理を強いるブラックバイトや大企業での過労ぶりを見聞きしてきた世代だ。職に就くにあたって胸にあるのは希望か、それとも不安だろうか》
朝日は「ブラック」「過労」という言葉を入れてきた。ちゃんと若者に寄り添ってますよ、という体だが「胸にあるのは希望か、それとも不安だろうか」という部分はちょっと自分の表現に酔ってる。リベラルおじさんあるある。
同じ日の読売新聞「編集手帳」も、
《過酷な労働を強いられないか。長時間残業、不当な低賃金、パワハラ…働く環境が問われている。》と若者を心配しているのだが、4月11日にはこんな記事があった。
「新入社員 電話応対が関門」(読売)
電話をかけたり受けたりすることに苦手意識を持つ若者が増えている、と。
《SNSでのコミュニケーションに慣れ、電話で会話をする機会が減っていることが背景にある。》からだ。
昔ながらの電話機の扱いができるおじさんがここでは有利。読売おじさんの「アドバンテージ感」が行間から漂う。
でも考えてみれば、電話機の扱いに不慣れなのは何も今年の新入社員だけではない。去年も、来年も、しばらく同じだ。つまりこれは「今どきの若者は…」と毎年書ける鉄板ネタなのである。きっと来年も似たような記事が出る。楽しみにしておこう。
日経おじさんは「辞めない新人探せ」と企業にアドバイス
そんななか「日本経済新聞」には、「就活解禁、スカウト・紹介…辞めない新人探せ」という記事があった(3月1日)。
「電話をちゃんととれるか」とネタにしてる読売おじさんをよそに、日経おじさんは早々と「新人は辞めるもの」という前提で企業側へのアドバイスを書いている。若者に関しては日経おじさんが一番シビアなのかもしれない。