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【オリックス】平野恵一から中島宏之、小谷野栄一に託された「常勝」のバトン

文春野球コラム ペナントレース2017

2017/04/26

平野恵一から託されたバトン

 2015年11月23日。割れんばかりの歓声と拍手に送られながら、小さくも偉大な名選手はグラウンドを後にした。ORIX Buffaloesの黎明期を二塁手として支えたリードオフマン、平野恵一(現・阪神打撃コーチ)である。

 内野・外野を自在にこなすユーティリティプレーヤー、時に繋ぎの2番打者、時に斬り込み隊長とその器用な印象が先行する彼だが、彼の本当の魅力は闘志を前面に打ち出した気迫溢れるプレースタイルにあったと思う。怪我を恐れぬそのプレーはBsのみならず阪神タイガースでも多くのファンを魅了した。また歴代の監督達からの信頼も絶大で、岡田彰布元監督もその著書『頑固力』で彼の重要性を語っている。

 その彼が最後にBs戦士達に託したバトン。これを読んでいるBsファン読者なら「西野真弘選手に託した二塁手のバトン」を想像するのかもしれない。しかし、今回は少し違う。今後数年、BsがAクラスで戦い続ける為に託されたバトン。中島宏之、小谷野栄一両選手に託された「常勝への水先案内人」としてのバトンである。

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2015年に登録名を「裕之」から「宏之」に変更した中島 ©文藝春秋

常勝への水先案内人

 元々どこか大人しい印象の強かったBs選手達。特に印象深い出来事が2014年10月2日の対ソフトバンク戦だろう。首の皮一枚で繋がっていたリーグ優勝への夢が儚くも断たれたその瞬間、泣き崩れるBsの若き司令塔・伊藤光選手の姿があった。我々Bsファンにとっては熱く胸を打たれる光景であったが、そこはやはり勝負の世界。悔し涙はファンに見せるものではなかったのだろう。決してBs選手達が弱々しい訳ではない。優しすぎる訳でもない。ただ悔しさの表し方が、闘志の表現方法が分からなかったのだ。これだけ優勝から遠ざかった若きチームである。当然といえば当然の事である。

 あの日、Bs選手達は届かぬ夢に涙する事しか出来なかった。この敗戦を受けて翌2015年。オリックス球団はその雪辱を果たす為、30億円とも言われた超大型補強に着手する事となる。

 その補強により入団した中島、小谷野両選手。プレーヤーとしての役割もさる事ながら「常勝への水先案内人」としての首脳陣の期待も大きかったと思う。両選手とも複数年契約での入団である事からも、Bsが今後数年Aクラスで戦う事を視野に入れての契約だった事は明白である。前述した平野恵一選手、当時主力であった糸井嘉男選手(現・阪神)、そして中島、小谷野の両選手。彼らにあって当時のBs選手達に無かったもの。それは勝利への執念だった。

 西武ライオンズ、日本ハムファイターズ、阪神タイガース。常に勝利を義務付けられた集団で培った彼らの経験と姿勢をチームに持ち込む事、これがこの大補強の大きな役割であったのではないだろうか。

 チームとしての結果こそ伴わなかったものの、2015年と2016年、怪我を抱えながらも全力で一球と戦う中島選手、小谷野選手の姿は、我々ファンのみならずBs選手達にも勝利への執念を伝えるには十分であった。

勝負強い打撃でチーム躍進に貢献している小谷野 ©文藝春秋

いよいよ猛牛の遺伝子が覚醒する

 そしていよいよ結果が実を結び始めた2017年。このシーズンを存分に戦う事で、T-岡田選手や安達了一選手らは常勝へのバトンを受け継ぐ事が出来るのだろう。中島、小谷野の右の強打者に挟まれた左の大砲・T-岡田の打撃成績が、その姿勢を大いに物語っている。

 戦力が整った事が快進撃のきっかけである事は間違いない。怪我人が少ない事も理由の一つに挙げられるだろう。しかし、Bs選手達の姿勢に変化が現れた事がこの快進撃を支える一番大きな理由なのではないだろうか。先行されても追いつく事ができる。失点しても取り返す。今年のBsは間違いなく例年より粘り強く戦っている。何より試合途中で帰途に着くファンがめっきり減った。もう悔し涙で終わった2014年のBsでは無いのだ。

 勝利への執念を強く押し出す事が出来るようになったBs。球界を代表する右の強打者2人が持ち込んだ変革が、いよいよ猛牛の遺伝子の覚醒を促す。これはもう春の珍事ではない! 春のCHANGEだバファローズ!

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。

【オリックス】平野恵一から中島宏之、小谷野栄一に託された「常勝」のバトン

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