いまから30年前のきょう、1987年5月8日、俵万智の歌集『サラダ記念日』が河出書房新社より刊行された。俵は当時24歳、神奈川県立橋本高校の教諭だった。「与謝野晶子以来の大型新人類歌人誕生」のふれこみで売り出された同書は、ベストセラー1位を独走、年内には250万部を記録する。

 これほど評判となったのは、書名となった「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」という一首をはじめ、口語体を交えた軽やかで新鮮な歌風によるところが大きい。『サラダ記念日』はTBS「東芝日曜劇場」で単発ドラマ化(安田成美主演)され、フジテレビでも同タイトルで、イメージ映像をバックに俵万智自ら短歌を朗読するミニ番組が放送された。このほか、俵は雑誌やテレビに引っ張りだことなり、一躍、時の人となる。87年末には、『月刊カドカワ』での連載をまとめた第二歌集『とれたての短歌です。』(浅井愼平写真、角川書店)も発売した。

88年3月24日、歌集「サラダ記念日」200万部突破謝恩「サラダ大賞」発表パーティーの会場に詰めかけた人たちにサラダのサービスをする著者、俵万智さん(東京・千代田区のパレスホテル) ©時事通信社

 ベストセラーとなった同書に対しては、返歌集『男たちのサラダ記念日』(サラダ倶楽部著)が刊行され、著作権侵害騒ぎも起こる。一方で、河出書房新社が募集した第1回サラダ大賞には、全国から50万通の応募があった(世相風俗観察会編『現代風俗データベース'86~'87』河出書房新社)。さらにこの年末に発表された新語・流行語大賞では、「サラダ記念日」が同年の新語・流行語の「新語部門・表現賞」に選ばれている。同書にあやかり「○○記念日」が各地で続々と誕生するなど、短歌以外の世界にも影響を与えたことも受賞理由となった。