『マジカル頭脳パワー!!』に夢中になっていた小学生時代の延長線上だろうか。高校生のとき、クイズに無性に興味を持って、クイズの関連本をいろいろ読みあさっていた。その中の一つが「アメリカ横断ウルトラクイズ」の覇者として知られる長戸勇人の著書『クイズは創造力』だったのだが、それを読んで知ったことがある。雑誌などによく載っているクロスワードパズルが、クイズサークルなどに所属するいわゆる「クイズ王」な人たちが作っているということだ。クロスワードパズルというのも、電車の車内誌とか新聞の日曜版とかで誰もが一度は解いてみたことがあるだろうが、たいていの人は誰が作っているのかというのを考えたことがないものだと思う。でも回文やなぞなぞと同じように、どこかに作者がいるからこうして世に出ているのである。
そのことをきっかけに、クロスワードパズルを解くのではなく、作るという行為のほうに興味が出た。そうして授業中にノートにひとりでマス目を描くようになった。もちろん毎度の通り、誰にも見せないままである。
とりあえず適当に作ったこんなマス目があるとする。左端の縦の行は5文字の言葉を入れられる。ここは5文字ならなんでもいい。ただ、ポイントは5文字目が「横の5文字」の頭文字になるのが決まっていること。ここを日本語として成立させるためには、「ん」で終わってはならない。なぜなら「ん」で始まる日本語はないのだから。しりとりマニアのあいだでは超メジャーなチャド共和国の首都「ンジャメナ」を使っちゃいけないというわけじゃないけど、せっかく自由度の高いトップバッターなのだから、一応はちゃんとやろう。とりあえず、さっき入ったお店で大塚愛が流れていたので「さくらんぼ」としてみる。
次は2段目横。ここは「く」から始まる2文字の言葉が入る。マス目の関係上、他の言葉と触れ合わないので何を入れても自由だ。「くり(栗)」にしてみよう。
そして次がいよいよ、下の段の「ぼ」から始まる横5文字。「くり(栗)」よりずっと難易度が高い。ここは国語辞典の出番だ。そうして見つかった「ぼ」から始まる5文字の言葉のうちもっともメジャーなもの、それは「ぼくしんぐ(ボクシング)」。
さて、そうなると中央と右に注目。真ん中縦に「し」で終わる3文字、右縦に「ぐ」で終わる3文字が必要になってくる。中央の3文字は「あらし(嵐)」、右の3文字は「がんぐ(玩具)」に決定する。となると真ん中の横には、頭文字が「あ」、最後が「が」の3文字の言葉ということになってしまう。こうなると相当難しい。「あ○が」の中央だけが回転し続けているスロットマシンを脳内でシミュレートしてみるが、なかなかしっくり来る一字がない。こういうときは、クロスワードパズルならではの技。問題文でなんとかしてしまおう。たとえば、「チャールズ・リンドバーグの伝記映画のタイトルは『翼よ!○○○巴里の灯だ』。○○○には何が入る?」みたいな問題にすれば単独で一語になっていなくても大丈夫なわけです(正解は「あれが」)。