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中央大・舟津選手と田母神選手の最後を見届けたかった――箱根駅伝2020「TVに映らなかった名場面」復路編

中央大・舟津選手と田母神選手の最後を見届けたかった――箱根駅伝2020「TVに映らなかった名場面」復路編

2020/01/04

 青山学院大が2年ぶり5度目の総合優勝を果たした第96回箱根駅伝。今年も数々のシーンが駅伝ファンの心に刻まれた。今大会も全区間に足を運んで現地観戦した駅伝大好き集団「EKIDEN News」(@EKIDEN_News) の西本武司さんが、マニアックすぎる復路のエピソードを語り尽くす。(「往路編」もお楽しみください)

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【6区】日体大・廻谷選手がシューズに書いたメッセージ

 この区間、僕が注目をしていたのは、日本体育大の寮長を務める4年生の廻谷賢選手。彼は箱根駅伝を中継する日テレのディレクターが「彼のnoteは抜群に面白い」と太鼓判を押す、競技以外でも注目の逸材です。

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 復路のスタート前、廻谷選手に注目していると、彼が履くナイキのヴェイパーフライのソールに何かが書かれている。よく見てみると「本部がやるしかです」と。

廻谷選手のシューズに書かれた「本部がやるしかです」 ©文藝春秋

「このフレーズはなんだろう、アニメか何かの引用かな?」と思ってTwitterで呟いたところ、本人から反応がありました。「本部」と言うのは廻谷選手をはじめ、5~8区の選手たちが一緒に生活をする寮の部屋の名前だそう。「本部」で生活する選手たちが「やるしかない」という意味で、結束力の高さが伺えます。

 その廻谷選手、実家は米農家ですが、パン好きとしても知られています。卒業後は、スーパーベルクスを経営するサンベルクスで陸上を続けることが決まりました。廻谷がスーパーベルクスでパンを売る。その姿を思い浮かべるとワクワクしますね。

6区のスタート、右端が廻谷選手 ©文藝春秋

 日体大つながりでもうひとつ。今や箱根駅伝はTwitterなしでは語れませんが、欠かせないのがハッシュタグ。昔は「#箱根駅伝」で事足りましたが、今は細分化されて、各大学独自のハッシュタグが存在しています。

 例えば、青学大の原監督は毎年12月に行われる箱根駅伝のプレイベント「監督トークバトル」でその年のテーマを「〇〇大作戦」と発表します。これがそのままハッシュタグとなるのです。ですから僕らは、原監督が今年のハッシュタグを発表するイベントと位置付けています。今年の青学大は「#やっぱり大作戦」、他にも東海大は「#GOTOKAI」、明治大は「#令和で起こす明治維新」と独自色を出しいてる。

 そんななか、日体大はこれというハッシュタグを持っていませんでした。もう「#日本体育大学」とかでいいんじゃないかと思い始めた頃です。NGT48で“駅伝に詳しすぎるアイドル”として知られる西村菜那子さんから「全日本大学駅伝に出るハッシュタグを集めているんですが、日体大のハッシュタグって何かありますか?」と問い合わせがきたのです。結局西村さんのオファーには間に合わなかったのですが、部員たちが必死で考え、全員がそれだ!と同意したハッシュタグがようやくできました。それが「#んっす」です。

 何かと思うでしょ? 日体大は英語でNippon Sport Science University。これの頭文字を取った「NSSU」が「#んっす」なのです。ちなみにこのハッシュタグ、せっかく作ったのに、部員も使わないのでほとんど広まらなかったことをお伝えしておきます(笑)