青山学院大が2年ぶり5度目の総合優勝を果たした第96回箱根駅伝。7区間で区間新記録が生まれたことが話題となったが、駅伝ファンの心に刻まれたシーンは他にもたくさんある。今大会も全区間に足を運んで現地観戦した駅伝マニア集団「EKIDEN News」(@EKIDEN_News)の西本武司さんが、毎年恒例、テレビで観ているだけではわからない“細かすぎる名場面”を語った。まずは「往路篇」をどうぞ。(「復路篇」もお楽しみください)
【1区】“都市伝説”を覆した創価大、最後尾からの区間賞
今大会はこれまでの常識がさまざまな場面で覆されて、驚きの連続でした。まさに「令和の箱根駅伝」――それを予感させる場面が、すでに1区のスタート直後からありました。
実は箱根駅伝の1区には“都市伝説”があります。「大手町をスタートして最初のカーブを一番に曲がった選手が1区を制す」というものです。気になってEKIDEN Newsは「あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド2020 」(ぴあ MOOK)で、過去16大会をさかのぼって調べてみたところ、カーブを一番に曲がった選手の区間賞は8回。高確率ですね。
ところが、今年区間賞を獲得した創価大学の米満怜選手が最初のカーブを曲がったのはなんと集団の最後尾。最初から異例の事態が起きていたのです。
スタートで最後尾の選手が区間賞、これは1区が高速レース化したことの裏返しでもあります。「令和の箱根駅伝」における変化その2といえるでしょう。
これまで1区のレース展開は、スローペースで進んで最後にぴゅっと飛び出してトップを狙う、というのがセオリーでした。駒澤大や東洋大はこのセオリーに則った選手起用をした。ところが早稲田大は中谷雄飛選手、東海大は鬼塚翔太選手、青学大は吉田圭太選手と、本来はエース区間の2区に投入されてもおかしくない選手を投入して、「1区=スローペース」という常識を崩しにいったんです。
そして定説を覆す展開の中、創価大が区間1位、國學院大が区間2位となった。これまで本命ではない学校が上位に入るのは、留学生がうまく走ったケースぐらいしかあり得なかったのですが、ノーマーク校の日本人選手が区間賞を獲得。何から何まで新しい、まさに「令和の箱根駅伝」! 今回、これ何度も言いますからね(笑)。