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【3区】青学・鈴木「ヴィンセント、先に行け」事件の真相

 2区が「ランデブー」なら、3区は「ランデブー未遂」が記憶に残りました。東京国際大のイエゴン・ヴィンセント選手が1時間を切る59分25秒というとんでもない区間新を叩き出したのですが、青学大の鈴木塁人選手の“ある行動”が記録達成をアシストしたとも言えるでしょう。

 11km過ぎ、先頭を走っていた鈴木選手が後ろについたヴィンセント選手に「先に行け」とばかりに手で合図したシーン、覚えている方も多いのではないでしょうか。中継では、実力差も考えて道を開けたかのように言われていました。

 しかし実情は違ったみたいです。レース後に鈴木選手と言葉を交わした駅伝仲間のポールさんによると、実はこの直前、原監督がヴィンセントの後ろにつけと指示を出して、トイレ休憩に入ったらしいんです。本人としてはその指示に従って、「先に行け」ではなく、「俺を引っ張ってくれ」という合図のつもりだったそうなんです。鈴木選手はこの1年、タイムが伸び悩んだりと、ずっと苦しんでいた。だからこそ、箱根で先頭争いができることが楽しくて、笑顔で走りながら合図を送ったと。

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 ところがヴィンセント選手には、その思いが伝わらなかった。むしろ火をつけてしまったようで、一気に抜いていってしまった。鈴木選手は「あ、これは勘違いしちゃったな」と思ったそうです。実際、映像を見ると、驚いた様子で何度もヴィンセント選手を見る鈴木選手の姿が写っています(笑)。「あいつ、すごいスピードで抜いてったんですよ」と苦笑いをしていましたが、歴史的記録が生まれた影に鈴木選手のアシストがあったということは、残しておきたいと思います。

ヴィンセントの区間新をアシストした?青学・鈴木選手(右) ©文藝春秋

 もう一つ、今大会のキーワードといえるのが「国産留学生」です。ヴィンセント選手のように留学生の活躍はありましたが、それ以上に、相澤選手をはじめ日本人選手が、留学生選手と比べても遜色のない走りをしたことも目立ちました。Twitter上では彼らを冗談で「留学生ですよね?」と言う人も出てきて、相澤選手は「アキラ・アイザワ」、7人抜きで区間3位だった駒沢大のスーパー1年生・田澤廉は「レン・タザワ」、区間2位の帝京大2年生・遠藤大地は「ダイチ・エンドウ」と呼ばれていました。サッカーの本田圭佑選手を「ケイスケ・ホンダ」と呼ぶ感じです。世界レベルのポテンシャルがある日本人選手が続々と登場する、これも「令和の箱根駅伝」ですね。