選手弁当は各1,550円、由伸監督弁当は強気の2,000円
巨人戦が行われる東京ドームは、“球場”というより“観光地”の雰囲気に近い。
これまで数百試合、現地で観戦した正直な感想だ。グッズ売り場には「東京ドームに行ってきました!」という直球のお土産タオルが販売されているし、近年は東京観光の一環として訪れる外国人ツーリストの姿も目立つ。もちろん都心からのアクセスは良く、屋根があるから雨天中止の心配もない。良くも悪くも、東京ドームはスカイツリーや浅草寺と同じカテゴリーにあるように思う。
いつの時代も、人を集める観光地で重要なのはマニアックさではなく、ベーシックな大衆性である。求められるのは、斬新なファンサービスより、一種のベタさ。その「ベタさの象徴」が東京ドームの巨人戦で販売されている選手プロデュース弁当だ。まずは販売ラインナップを確認してみよう。そのなんだかよく分からないネーミングセンスに注目だ。
・高橋由伸 高橋監督の新化!! プレミアム弁当
・坂本勇人 キャプテン坂本勇人の肉満載よくばり弁当
・亀井善行 亀ちゃんのこだわり牛たん&天ぷら御膳
・阿部慎之助 最高です! あべんとう〜極上中華ver.〜
・菅野智之 エース菅野智之 大好物!! チキンづくし弁当
・小林誠司 小林誠司のプルコギ&彩りキンパ風弁当
2017年はこの6名のプロデュース弁当を販売中。選手弁当は各1,550円、由伸監督弁当はなんと強気の2,000円だ。凄い、ほとんどお父さんの1週間分の昼食代である。さすが慶応出身のプリンス、奥さんは元女子アナ。弁当までセレブ仕様である。高いな……と思うが、これを「観光地価格」と考えれば納得する。東京ドームは球場というより観光地。いかにベタに攻めるか。
「あべんとう」の愛すべきベタさに1杯800円のビールで乾杯だ。とは言っても、一部チケットに付いてる10%割引券を使ったとしても、コンビニ弁当の数倍の値段がするのは事実。慣れたファンは事前に駅近辺の店で食料や飲み物を買ってから来場する人も多い。いったいこの高価な選手プロデュース弁当を買うのはどういうお客なのだろうか? 4月下旬の週末、巨人戦デーゲーム開始2時間前の東京ドームに出掛け、実際に確認することにした。
圧倒的人気! 坂本弁当の中身は?
よく晴れた日曜日の午後12時5分。昼飯を食べるにはこれ以上ないという時間帯、東京ドーム1塁側内野席に近い弁当売り場後方にスタンバイ。この日はタイミング良く巨人vs阪神の伝統の一戦だ。12時開場に合わせ、お客の出足も早い。
オレンジ色のハッピを着た小柄でキュートなお姉さんが「選手プロデュース弁当こちらです〜!」「大人気坂本選手のお弁当こちらです!」と全力で絶叫している姿に多くの客の足が止まる。ちなみに血走った目でその様子を真剣にチェックしている俺は、遠目から見たら完全に変態だろう。しばらく周囲を観察していると、やはり圧倒的に売れ行きがいいのは“キャプテン坂本勇人の肉満載よくばり弁当”だ。
意外なのは、背番号6ユニフォーム姿の女性ファンだけでなく、阿部や菅野のレプリカユニ姿の男性ファンも坂本弁当を買って行く光景。その1人の大学生風の兄ちゃんに話を聞くと「あ、もう弁当の中身で決めてますね。一番肉多いから」と即答。思わず「ニクいね坂本」なんつってベタなギャグをかましそうになるのを必死に堪える。他にも数人に話を聞くと意外にも、この「おかずで決める派」は多かった。初めて、もしくは久々に東京ドームに来た記念弁当、同時にしっかり中身も吟味。不思議なことに、人は目の前で売れまくる商品を自分でも欲しくなる生き物だ。気が付けば、1,550円を財布から出して坂本弁当を買ってる自分がいた。
早速フタを開けてお品書きを見ると、「デミグラスハンバーグ目玉焼き添え、ポークソテートマトソース、スパゲティナポリタン、ポテトフライ、タンドリーチキン、牛肉彩りチャプチェ、タラモサラダ、白飯、明太子」というとんでもないボリュームだ。まるでチビっ子たちに「これを食べきれないとプロ野球選手になれへんで」と檄を飛ばすかのような品揃え。“肉満載よくばり弁当”のネーミングはガチだった。さすがキャプテン、チームメイトだけじゃなくファンも甘やかさないニクい男だ。