「俺は、完全燃焼って言葉はあまり好きじゃないんだよな。俺はゴルフは一生、修験道みたいなもんだと思ってるから。一生、悟れるわけはない。でも、なんとか、それに近いものはあるんじゃないか……とね」
長年日本のゴルフ界を引っ張ってきたトップスター、ジャンボ尾崎こと尾崎将司の言動が久々に注目を集めたのは、今年1月のことだった。1月24日、70歳の誕生日を迎えた尾崎は、集まった報道陣を前に、「今年結果が出なかったら、クラブを置く」と語ったのだ。
青木功、中嶋常幸とともに「AON」と称され、特に1980年代から90年代にかけて黄金時代を築いた尾崎。これまでのゴルフ人生で通算113勝(世界プロツアー最多記録)を挙げ、生涯獲得賞金ランキングでは断トツの26億円超を稼いだ。しかしながら、最後に優勝したのは15年前、ここ3年は一度も予算通過したことすらない。
この年まで、シニアツアーには一切参加せず、ひたすらレギュラーツアーにこだわってきた尾崎は、今一体何を思うのか――。気鋭のノンフィクションライターで、雑誌「Number」などでもスポーツ各界の名選手を取材してきた中村計氏が迫った。
決してメディアと友好関係にあるとは言えず、一度はインタビュー依頼も断った尾崎だったが、その後、手紙による中村氏の説得を受けて、インタビューを受けることを決意した。
ままならない自身の体調を「もういっぺん、普通の状態でゴルフしてーなー」と嘆いたり、「われわれ団塊の世代は、日本が苦しいとき、この国を何とかしたいという思いが強かった。日本っていうのが常に頭にあるから、俺も『日本で一番になる』って。世界で自分ががんばる姿を見せたいなんて、思ったことない」と日本への思いも口にした。
引退について水を向けると、「ゴルフがプレーできなくなったら、俺の人生は99パーセント終わり。別に長生きしようとは思ってないんだけど。変な話、ゴルフが出来なくなったら、腹切って死のうかなって。趣味が刀剣なんだよ」という発言も飛び出した。
90分にわたって、自らの来し方、ゴルフへの愛情、シニアツアーに出ない理由、そして選手としての「死に方」を語り尽くした貴重な独占告白。5月10日発売の「文藝春秋」6月号では、8ページにわたってその様子を詳報している。