「体調はいかがですか?」
「ヨクナイデス。ハヤクデタイデス」――。
年末にレバノンへ逃亡した前日産会長のカルロス・ゴーン被告は、拘置所にいる時にこんなやり取りをしていたのだろうか?
ゴーン被告も使っていた?ポケトーク
2020年1月8日の22時(日本時間)、 ゴーン被告はレバノンの首都ベイルートで行った会見で、
被疑者が逮捕されると、警察署の留置場か拘置所に送られる。18年11月に逮捕されたゴーン被告は東京・小菅の東京拘置所に送られ、昨年3月に保釈、再逮捕されて4月に再び保釈されていた。拘置所にいる間、ゴーン被告は面会人とポケトークを利用してやり取りしていた話があるという。
面会だけではなく、実は今、拘置所や留置場の一部でポケトークが利用されている。
ポケトークは小型の携帯用翻訳機。翻訳の性能が格段に向上したポケトークの登場で、18年は“翻訳機元年”とも言われた。
全国の警察署の留置場に留置される人数は、年間延べ312万人に上る。そのうち外国人は10%を超える延べ33万人に達している(「警察白書」平成30年版)。もちろん全国の留置場に一律10%の外国人がいるわけではなく、バラバラ。外国人が最も多い留置場の1つが、成田空港を管轄する成田国際空港警察署の留置場である。
昨年、この留置場に入っていた40代後半の日本人男性が話す。
「千葉県内では大きな留置場だと聞きましたが、2人部屋を中心にして十数部屋しかなく、30人も入れば満杯でした。その半数以上は外国人だった印象です。欧米人が多く、アメリカ、ドイツ、フランス、スペイン、オランダ、それにリトアニア人もいました。メキシコ人も多かった。東南アジア人も多く、夜な夜な泣いているスリランカ人とか、母国から薬物を勝手に送り付けられて逮捕され、途方に暮れているラオス人とか。彼らの口から出る言葉が何語なのかさっぱり分かりませんでした」
最も困っていたのが言葉だった。