いまから47年前のきょう、1970(昭和45)年5月11日、日本山岳会エベレスト登山隊の松浦輝夫と植村直己が日本人初のエベレスト登頂に成功した。
登山隊のうち第1次アタック隊に選ばれた二人はこの日早朝6時に、8513メートル地点のキャンプから出発、植村が先に行きながら山頂をめざした。これは大学山岳部では下級生が先に行くという慣習にしたがったものである。松浦としては、植村が万が一滑落したとき自分が止める絶対の自信があったし、植村としても松浦が後ろにいると思うと恐怖を感じなかったという。
いよいよ頂上が見えたとき、植村は後ろを振り返ると、松浦に先に登頂するよう勧めた。これに松浦は「いや、おまえ、先に行け」と合図するも、植村は動かない。結局、松浦と植村は肩を並べるようにして頂上に立った。ときに午前9時10分。植村は感極まっていきなり松浦に抱き着くと、涙を流したという。松浦も植村をしっかりと抱きしめ、互いに無言のまま息がつまるほど背中を叩き合った(長尾三郎『マッキンリーに死す 植村直己の栄光と修羅』講談社文庫)。植村はこの時点ですでにヨーロッパのモンブラン、アフリカのキリマンジャロ、南アメリカのアコンカグアに登頂しており、70年中にはエベレストに続いて北アメリカのマッキンリーに登頂し、5大陸最高峰を制覇している。
なお、松浦・植村の登頂の5日前、1970年5月6日には、プロスキーヤーの三浦雄一郎がエベレストのサウスコル8000メートルからのスキー滑降に成功した(日本山岳会エベレスト登山隊もその様子を見届けている)。三浦はその後もエベレストにチャレンジし続け、2013年5月23日には80歳でエベレストに登頂し、最高齢登頂記録を更新する。ちなみにエドモンド・ヒラリーとテンジンによる世界初のエベレスト登頂は1953年5月29日、日本女子登山隊の田部井淳子による女性による世界初登頂は1975年5月16日と、いずれも5月のできごとだった。