相続人には「家」より「現金」が圧倒的人気
◆1.生前売却
最近は、子供や孫が自分の住んできた家に「住まない」ケースが増えている。自分がどんなに愛着がある家であったとしても、子供たちは都心居住などで親の家には戻ってこない場合が多いのだ。先祖伝来の家でも「自分の代限り」の家、あるいは自分「一代限り」の家は、なるべく処分して現金に換えておくことだ。
たとえば、自分が高齢者施設等に入居して、もはや家には戻らない状況になったときなどがチャンスだ。親が戻らないとわかっていても、子供の側から家を処分したほうが良いなどとは、口が裂けても言い出せないものだ。
相続の場合、現金よりも不動産のほうが、相続税評価額が有利だといわれるが、今後日本の住宅地の多くが、地価下落となっていく局面。さっさと現金にして渡したほうが子供に喜ばれるというものだ。実際、現代の相続の現場では、親の「家」よりも「現金」のほうが、相続人には圧倒的に人気があると、私の知り合いの税理士は言う。
時代遅れの水周りは評価ゼロ! 家の値崩れに気づかない親たち
◆2.家の診断
子供に残す家は、先祖から引き継いできた家は別だが、自分が住宅ローンの返済に耐えて手に入れた家が多いだろう。買った当時の金額はよく覚えているものだが、その後はローン返済にかまけているだけで、不動産取引と縁のある親は少ない。
そんな多くの親は自分の家の価値が今、どのくらいになっているのかをよく理解していない。平成バブルの時は1億円したような戸建て住宅でも、いまや1000万円でも売れないような事態になっている家も多いということに、ほとんどの親は気づいていないのだ。
また、自分が手塩にかけて維持した家と思っていても、既に築30年から40年を経過した家だ。トイレやキッチン、洗面所、風呂などはすでに時代遅れの仕様になり、省エネの観点からも劣等生で、マーケットでは全く評価されない代物になっている。次の代まで残したい、賃貸に活用したいのなら、家のどの部分をどの程度直したらよいのかを見極めておくことだ。
売ればよいと思っていても、現実は甘くない。今自分の家がどの程度の評価なのかは、何も不動産屋に行かなくてもおおよその見当がつく。ネットを見れば、自分の住むエリアの同じような家がどの程度の価格で売買、賃貸されているかのデータはいくらでも拾うことができる。