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清張の「闇」とバカリズムの「光」を掬い取った2本のコラム

「週刊文春」5月18日号 最新レビュー

2017/05/13
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バカリズムの天才性を見極める「テレビ健康診断」

 “テレビっ子”を自認するライター戸部田誠(てれびのスキマ)は昨年10月、「テレビ健康診断」の執筆陣に加わった。彼は勝負づけの世界の外にいる。ビートたけしが、やすし・きよし、ドリフ、欽ちゃんを打ち負かしながら頂点に昇りつめていく、あるいはお笑い第三世代と呼ばれる芸人からダウンタウンが抜け出す、いやそもそも……などの芸人対芸人の勝ち負けにもとづく史観とは無縁である。その点で、同じテレビっ子でもナンシー関とはスタンスを異にする。言うなればフラットにテレビ番組に接し、今、目の前に映し出されているものを素直に楽しめる人である。

 今週号で書くのは「バカリズムの天才さを知る『架空OL日記』」。ここで取り上げるバカリズム原作・脚本のドラマは、いたって普通のOLたちの日常を見せるドラマなのだが、一点の奇態がある。男性であるバカリズムが主人公のOLを演じているのだ。

バカリズム ©時事通信社

 コラムでは演じ方に着目している。「このドラマにおけるバカリズムはデフォルメが一切ない」と。ベタに極端な女装をすることなく、創作物特有の「~だわ」といった女性口調をつかうこともない。男が男のままである。それでいて、紛れもなくOLなのだと賞賛する。

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 そんなバカリズムのふるまいを、戸部田誠はこう評して締めている。「バカリズムは普通の顔をしたまま狂っている。安易に『天才』と言うのは憚られるが、これを『天才』と呼ばずなんと呼べばいいのだろうか」

文春には84歳の小林信彦や、今年で80歳になる東海林さだおもいれば、春日太一、戸部田誠のアラフォー世代もいて、様々な世代のコラムが並ぶ。これも雑誌の魅力、雑誌の「雑」である。

清張の「闇」とバカリズムの「光」を掬い取った2本のコラム

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