奇跡ではなく日々の積み重ねが作る場所
震災後は、仮設住宅も仮設の店舗も市内あちこちに散らばってしまっていることもあって、仕事のついでや学校帰りにちょっと寄るということが難しい。車のない中高生は土日に親に連れてきてもらってということになる。復興工事が進み、新たな中心市街地が形成され、人の流れができてくれば、学校帰りに、買い物のついでに、ちょっと本屋に寄ることができる。本屋さんは、何か用がなくても立ち寄ることができる場所だ。セレクトショップのように特定の客層に向いた店ではなく、みんなに開かれた普通の本屋さん。雑誌の最新号をチェックし、続きが気になるコミックスを眺め、話題の新刊を手に取ってみる。気に入った本があれば買えばよいし、もちろん買わなくてもよい。復興委員会のメンバーにも入る伊東会長は、新しい市街地での伊東文具店のあり方を考えているという。
あたたかい、明るい、みんなに開かれた現在の店舗を見ていると、ごく普通の本屋さんが、新しく築かれた市街地に人の集まる場を与えてくれるように思う。それは奇跡ではなく、売り場を作り、一冊一冊の本を仕入れ、棚に並べ、接客し、売る、日々の積み重ね。その頃また陸前高田を訪れて、復興整備された松原から新しい市街地の伊東文具店まで、もう一度歩いてみたい。松を渡る潮風、人の流れ、賑わいが感じられる、素敵な街になっていることだろう。
【本の話WEB読者にオススメ】
伊東孝さんのオススメ本は、黒野伸一さんの『限界集落株式会社』(小学館文庫)。過疎化の進む集落を舞台にしたビジネス小説。直接、陸前高田の復興の参考になるという訳ではないが、興味深く読めたとのこと。最近NHKでドラマ化もされ、注目の作品。
伊東文具店
住所:岩手県陸前高田市竹駒町字相川1-1
営業時間:9:00~19:00
URL:http://www.yamajyu.info/
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