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 ICPOはスリから密輸入まで数多くの事件に関わっており、世間を騒がせたニュースの裏側にも度々登場している。

 07年にはイラクのフセイン元大統領の長女、11年はリビア・カダフィ大佐、17年は韓国の朴槿恵元大統領の知人として脚光を浴びたチェ・スンシル被告の娘、そして同年、金正男氏殺害に関わったとされる北朝鮮籍の男4人が国際手配されている。

リビアのリビア・カダフィ大佐。2011年に死去 ©getty

憲章の中でICPOが禁止していること

 そんなICPOにも、実はタブーがあるのだ。

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「 ICPOの憲章の中で、政治的、軍事的、宗教的、人種的性格を持ついかなる干渉や活動を行うことが禁止されているのです。残念ながら長い歴史の中でICPOが政治的に利用された出来事もあった。

 例えば近年も、ロシアのプーチン大統領が、国内の反体制派潰しのためにICPOを使って国際手配を乱発させており、ICPOの政治利用、私物化だと批判する声があった。孟総裁の辞任を受けて行われた総裁選挙では、米国が後任総裁として金氏を推していたが、ICPOへの影響力を保ちたいロシアはプーチンの側近を候補者として立て、米露が対立した経緯があったばかり。

 それだけにICPOは、この憲章を遵守することが一層求められています。ですからゴーン被告が会見で、日本で政治的迫害を受けたと主張したのは、ICPO憲章を念頭に置いていた可能性があるとも考えられます」(外信部記者)

  ICPO を巻き込んだ今、果たして検察がゴーン夫婦を追い詰めることはできるのか。

「現状、レバノンがすんなりと夫婦の身柄を日本に引き渡すとは考え難い。日本は犯罪人引渡条約をアメリカと韓国の2か国としか結んでいません。ただ、キャロル夫人はアメリカ国籍も持っているようで、アメリカに入国した際は、この条約を基にした交渉が可能になります。加えて、ICPO国際手配が受理されれば、夫人も実質的にはレバノン国内から出にくい状況になる。今後は、周辺国も巻き込みながら外交交渉によってゴーン夫妻を追い詰めていくことになるのではないか」(同前)

 銭形のとっつぁんがレバノンに乗り込んで、「御用だ!」というわけにはいかないのである。