都心部など大規模なところであれば、商社や端末メーカーだった企業の関連会社などが運営している。地方ともなれば、地元でガソリンスタンドやファミレスなどを経営している会社がキャリアショップを運営しているというところもある。つまり、NTTドコモやau、ソフトバンクの看板を掲げてはいるものの、大半は「別会社」なのだ。今回の騒動を起こしたドコモショップ市川インター店も代理店で兼松コミュニケーションズという会社が運営している。
そんなキャリアショップはいま、どこも経営危機にさらされている。
総務省による端末の割引規制により、とにかくスマホが売れなくなっている。かつては「実質0円」や「一括1円」といった割引施策によって、スマホを手軽に買えていたが、いまでは総務省から割引に対して規制が入ってしまったため、上限2万円しか割引ができない。
結果として、ユーザーがキャリアショップから遠のき、キャリアショップとしては経営が立ち行かなくなっているのだ。
もうひとつ、キャリアショップの経営が厳しさを増しているのが「人手不足」だ。とにかく、キャリアショップの店員になろうという人がいないのだ。
実際、キャリアショップの店員は、相当ハードな接客業と言われている。店頭では、クレーム客から罵倒されるケースも少なくないという。むしろ、日頃から侮辱されているのはキャリアショップの店員だったりする。実際に筆者も、キャリアショップで料金の支払いや修理対応で店員を罵倒している中年男性を見かけることがある。
また、キャリアが提供する新サービスや新料金プランなどは、頻繁に追加されたり変更されることがある。それらをしっかりと勉強し、頭の中に叩き込み、わかりやすく接客するというのは本当に骨の折れることだ。
いまではスマホの機種変更をすれば、対応時間が2時間近くなることもある。長時間、同じ客に対してわかり易く丁寧な接客を心がけようと思えば、精神的にも体力的にもつらい仕事となる。
シニアの溜まり場になった?
数年前までは、スマホが飛ぶように売れたので、スマホさえ売っていればよかった。しかし、割引規制が強化されたこともあり、とにかくスマホが売れない。
そんななか、キャリアショップが存続していくには、コンテンツなどの有料オプションに加入してもらい、さらに月々の支払額が高い料金プランに切り替えてもらうしかない。今回の騒動も、有料オプションや高額な料金プランへの勧誘がきっかけとなっていると言えるだろう。
現状、キャリアショップは「儲からない」と嘆く代理店関係者が多い。
例えば、地方のキャリアショップでは平日の午前中、シニアの客しかいないところも多い。その関係者によれば、シニアがキャリアショップに訪れ、若い店員を話し相手に時間をつぶしているというのだ。もはや、シニアにとってキャリアショップは、病院と同じような“社会との接点の場”という位置づけなのだ。
当然、オプションも料金プラン変更も行わず、ただ話をしているだけのシニアからは1円も利益は発生しない。